第297話 美月の放送
「前回のクイズの答えは『縁日』だ!」
開会式から、いきなり美月が放送することになった。
俺はただ隣で立ってるだけだけど。
美月は相変わらず、こういうの上手い。
さすが、これでお金貰ってるだけある。
「――ふぅ、緊張した」
マイクから口を遠さげて美月が言う。
もう開会式が終わったみたいで、みんな退場してる。
……あ、退場って『アリーナ』から出るってことね?
「美月でも緊張するんだ。なんか慣れてそうだけど」
「そりゃ、同級生何人にも聞かれるわけだし」
「収録のときとかは大丈夫なのか?」
「だいたい一人で録ってたから」
一人で録るんだ。
そういうのあんまり詳しくないからわからない。
「そういえば俺たち、ずっとここにいるのかな?」
「かもね」
「……ってかさ、絶対俺いらないよね。美月だけで充分じゃん」
「私一人じゃ寂しいじゃん」
「じゃあ大雅呼ぼっか?」
こう訊いたのは、ちょっと美月の返答が気になったから。
なんて言うかな、美月。
『大雅なんか役に立たない』とか言うのかな?
「……いや、大雅はいいや」
惜しい、ちょっと違ったな。
ってか、その言い方のほうが、大雅傷つかない?
静かに『いいや』って……。
「大雅の前じゃ、あんまりできないよ……」
「……?」
「……やっぱ私、おかしいのかな……。あんな喧嘩バカ……」
「美月?」
「! なんでもない!」
え、なにそれ。
なんでもないわけないじゃん。
大雅も美月も、高校で最初に友達になったやつだから、背中押してあげよ。
どっちの後押しすればいいんだろ?
美月はもう完全に大雅のこと好きっぽいから、美月のほうを後押しよっかな?
でも美月がいくらアプローチしても、大雅がそれに気づく未来が見えない。
あいつ、鈍感だもんな。
いや、それはそれで面白そうだな。
今度から積極的に二人きりになるよう、頑張ってみるか。
「そ、それより! 次の種目だ! 最初は1年生のやつだろ! 共に見るぞ!」
興奮すると口調がいつも通りに戻るんだな。
照れ隠し、意外とかわいいな。
「次はお主が放送するか!?」
「俺はいいよ。放送とかあんまり好きじゃないし。美月もいい練習になるだろ、収録の」
「前崎先生は最初、お主を放送係に頼んだのではないのか……」
「俺は美月の放送聞きたいし、みんなもそっちのほうが聞きたいだろ。マジの声優の生声聞けるんだし」
「いつも聞いてるじゃん、学校で」
「それとこれとはまた違うでしょ? ほら、早く1年生、アリーナに集めな?」
「……わかっておる」
美月は最後にそう言って、またマイクに口を近づけた。
「作者から伝言だ! 『作者のテストが終わったので、投稿再開します。……これからはいっぱい書き溜めとかなきゃな……』。テスト、終わったのか……。ではクイズだ! 『冬乃の、普段の一人称は?』。……なんだこれ、どこが面白いんだ?」




