表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/347

第289話 伝え方

「前回のクイズの答えは『✕』だ!」

 俺はひなたさんと反対方向を歩いて水麗をさがしてる。

 メールで水麗に『今どこいる?』って送ったのに既読がつかない。


 あいつ一人でどこ行ってるんだよ……。


 どうせもっと奥までさがさなきゃ見つからないんだろうな。

 あとどのくらい時間かかるんだろう?

 すぐには見つからないと仮定して、きっと1時間くらいかな?


 そう思って歩いてたら、前を誰かが通る。

 女子高生かな?

 多分そうだ。


 ……いや、こいつ水麗じゃん。


 水麗は俺に気づいてないみたいで、歩き続けてる。

 なんであんな近く通ったのに俺に気づかないんだろう……。


 いや、これめちゃくちゃいいチャンスじゃん!

 今謝らなきゃ。


 「なぁ、水麗!」


 近くにいるのに、俺は大声で名前を呼ぶ。

 すぐに水麗は振り向いた。

 ……気まず。

 ちゃんと言えるかな? ごめんって。


 「言いたいことがある」

 「……夕飯はちゃんと作るから安心して」


 は? なに言ってるの?

 なんで急に夕飯の話になった?

 まったく理解できないんだけど。


 「そ、それより俺から言いたいことがあって……」

 「そっか」


 素っ気な。

 逆に謝りにくくなったわ。

 怒ってくれたほうが謝りやすいのに。


 でも謝らなきゃ。


 「さっきは本当にごめん!」

 「……なにが……?」


 え? 『なにが』?

 数分前のこと忘れてるの?


 え、こいつ水麗の偽物?


 ……そんなわけじゃなさそう。

 水麗の表情からすると、多分とぼけてるんだ。

 今の水麗は感情がこもってない表情を浮かべてる。


 無表情ってわけじゃないけど、なんかしらの表情を浮かべてるってわけじゃない。


 「別に水麗が信頼できなかったわけじゃない! 俺も変に誤魔化して悪かった! ただ、あれはひなたさんのプライベートの問題だった! あの感じからすると、ひなたさんは俺だけに話してくれたみたいなんだ! だからそう簡単に話せなかったんだ!」

 「…………」


 水麗は黙って表情を変えないまま俺に近づいてくる。

 俺もこれ以上なにか言うつもりはなかったから、黙ることにした。


 「…………」


 まだ水麗は黙ったままだった。

 そして俺に抱きついた。


 めちゃくちゃ強く抱きついてくる。

 俺は抱き返したりしないで、水麗の頭を見てた。


 水麗はなんも言わなかったけど、今になってやっと伝わった。

 こいつも『ごめん』って伝えようとしてる。


 伝え方が言葉じゃないだけだ。


 そうだ……こういう伝え方もいいんだ……。

「……これってさ、ひなたちゃんまださがしてるよね? 康輝と水麗の抱擁シーンの最中も、ひなたちゃんは水麗のことさがしてるんだよね? ひなたちゃん、お疲れ様……。ではクイズだ! 『大雅の好きな食べ物は?』。最近大雅出てないな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ