第285話 急な先輩たち
「前回のクイズの答えは『5人』だ!」
「え、先輩!?」
驚きすぎて変な声が出た。
だって驚くでしょ、こんなところに先輩いたら。
「康輝ー、かわいいかわいい妹ちゃんいじめちゃダメだよー」
丸木先輩が俺のところに来る。
いじめたってわけじゃないと思うんだけどな……。
「ってか、康輝って怒るんだね。部活じゃヘラヘラしてるのに」
「いや、康輝はヘラヘラしてないでしょ」
丸木先輩に続いて結城先輩、明田先輩もこっちに来る。
その前になんで先輩がここにいるの?
「とにかく、ここじゃ話しにくいから向こう行くよ」
丸木先輩が俺の腕を掴んで歩き始める。
水麗がいるところと反対方向だ。
俺は黙って引っ張られながら歩いた。
「――こことかどう?」
だいぶ開けた場所まで来ると丸木先輩は止まる。
人が結構いるけど、美月たちはいなさそう。
「あ、それと超今更だけど『なんでスーパーウルトラかわいい先輩たちがこんなところにいるの!?』ってなったでしょ」
「前半は違いますけど、後半は確かに思いました」
「実はね……」
あ、スルーされた。
ここで『それってどういう意味!?』とかツッコミ待ってたのに。
どうしよう、真面目に受け止められちゃったかな?
「康輝のことだから、こういうトラブル起こるかなーって思ってて、私たちも来ることにしたの」
……え?
え、ちょっと待って、マジ?
俺そんなにヤバいやつだと思われてる?
それと、俺先輩たちにここに来るって言ったっけ?
「『本当は、たまたまここに遊びにきたら偶然康輝がいて、話しかけようと思ってたらなんかケンカしてる最中だった』なんて口が滑っても言えないけどね」
後ろから結城先輩の声が聞こえる。
……ああ、納得した。
先輩たちもここに遊びにきてたのか。
「ちょっ、なんで言うの!?」
「嘘はよくないよー」
「そうそう、嘘はよくない。嘘つきは泥棒の始まりだよ」
「あんたらだって呼吸するかのように嘘ついてんじゃん!」
「それも嘘じゃん。よくないよ?」
「はぁ? ケンカ売ってるの!?」
「もー、怒りっぽいんだからー。カルシウム不足? それともカフェイン摂りすぎ?」
「あー、もう怒った。私、怒っちゃったよ? どうする? 謝るなら今だよ?」
ヤバいじゃん、先輩たちケンカしちゃいそう。
俺と水麗のケンカを止めるために話しかけてくれたんでしょ?
それなのに先輩たちがケンカしちゃったらダメじゃん。
止めなきゃ。
でもどうやって止めればいいかわからない。
……でも丸木先輩が怒ったところ見てみたいな……。
「なーんか将棋部の部員みんな面白いな。先輩たちはすごいし、海波もまぁまぁヤバいし、康輝は論外だし。ではクイズだ! 『現在、冬乃の部活は明かされている。◯か✕か』。冬乃かー……」




