第281話 散歩へ
「前回のクイズの答えは『◯』だ!」
めちゃくちゃしょっぱい魚をなんとか食べ終わった。
ニジマス1匹しか食べてないのに、なぜか満腹になってる。
塩って満腹になるんだね。
ただ、ここからたくさん汗流さなきゃいけないけど。
「康輝、お前全然食ってなかったけど大丈夫か?」
珍しく大雅が俺のことを心配してくれる。
そんな大雅はまだ食べてる。
「大丈夫、ちょっとだけ具合悪くなったけど」
「? 食中毒?」
「いや、塩分摂りすぎたんだと思う」
「あー、なんだ、心配して損した」
はぁ?
具合悪くなったら心配しろよ。
そして損するな。
大雅はそれだけ言ってどっかに行った。
あいつは本当になんなんだ。
でも本当に汗流さなきゃヤバい気がする。
ちょっとそこの森、散歩してくるか。
「ちょっと汗流すために散歩してきますね」
前崎先生たちにそう声をかけて、森のほうに行こうとした。
「――ちょっと待って」
後ろからそう声をかけられたから止まって、振り向く。
そしたらひなたさんがいた。
「私も一緒に行っていいかな?」
「え、もちろんいいけど……、まだ食べなくて大丈夫?」
「それは康輝くんも同じだよ」
「俺はなぜか満腹になっちゃったからな」
「私もそうだよ。じゃ、行こっか」
ひなたさんはそう言って歩きだした。
俺はひなたさんと並ぶように歩幅を合わせる。
うわ……俺、有名人の隣を歩いてる。
ヤバい、今になって緊張してきた。
「康輝くんってさ、学校だとどういうキャラなの?」
歩きながらひなたさんが訊いてくる。
学校だとどういうキャラって……。
なんとも言えないな……。
「こんな質問されても困っちゃうよね、ごめんね」
「いや、別に大丈夫だけど……」
「ちょっと気になったんだ。私と康輝くんが初めて会ったとき、康輝くんって髪緑だったなって思って」
うん、確かに緑だった。
だって冬乃にほぼ強制的にさせられたもん。
あの姿でナンパしたら、かなりチャラいやつに思われるだろうな……。
「今と変わらないよ、学校でも」
「そっか、変に飾らないほうがいいよ。そっちのほうが楽だし」
なんか意味深なこと言ってない?
え、なに、これって相談事とかある感じ?
でもひなたさんは止まらないで、人があんまり来なさそうなところに向かってる。
だんだん怖くなってきたよ、なんか。
「もうちょっと奥まで進んでいい?」
「うん……」
「ありがと」
マジでなんなの?
怖いんだけど。
「康輝……ひなたちゃんと二人きり……! 羨ましすぎる……! ってか、ずるいよ! じゃあクイズ! 『康輝は髪を緑に染めたことがあるが、どこで染めた?』。……これって考えなくてもなんとなくわからない?」




