第280話 魚を焼いた
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
いろいろと準備できたみたいだから魚を焼くことになった。
俺もだいぶ回復してきて、今はあんまり苦しくない。
ただ、これからは本気でジョギングしようと思ってる。
朝早めに起きて、30分くらいジョギングしよっかな?
でも一人でやるのはなんか嫌だな……。
水麗誘う?
いや、あいつ早起きとか苦手だから無理か。
じゃあ大人しく一人で走るしかないのか……。
……うん、どうしても嫌だ。
ダメ元で水麗も誘ってみるか。
「なぁ、水麗」
「なに?」
「早起きって得意だっけ?」
「……急にどうした? 朝一緒に散歩とか行くの?」
惜しい、散歩じゃなくてジョギングなんだ。
「まぁ、そんな感じ。運動不足ひどいし、やろっかなって思ってるんだけど水麗も来てくれるかなって」
「お兄ちゃんと一緒でしょ?」
「もちろん」
「それなら私もやる! お兄ちゃんと一緒に走りたい!」
やったー、水麗と一緒に走れるー。
やっぱダメって予想できててもちゃんと訊きたいことは訊かなきゃな。
「ってか、運動不足ひどいなら大雅と喧嘩とかしたら?」
「嫌だよ」
「俺のこと呼んだ?」
早速大雅が俺たちの間に入る。
片手に串に刺さった焼かれた魚を持ってる。
「いや、呼んでないから大丈夫」
「喧嘩って聞こえたんだけど」
地獄耳だな、意外と。
『喧嘩』ってワードには敏感なのか。
「それよりもう焼けたのか?」
「今焼けたばっか。食わないの? それなら俺が喜んで食うけど」
「俺が食うからお前は食わなくていいぞ。じゃ、行こ」
「うん」
俺は水麗にそう言ってみんなのところに行く。
みんな、大雅の持ってたやつと同じ、串に刺さった魚を持ってる。
結構美味そう。
でもさ、これ自分が釣ったらもっと美味くなるんだろうな。
俺はニジマス釣ってないんだよな。
代わりにボロボロの長靴とか空き缶とかビニール袋とか釣れたんだよな。
「康輝ー、早く食おうぜー! 自分で釣った魚は最高だぜ!」
先生、俺は釣ってないんですよ。
それでも俺は無理に笑顔をつくって、前崎先生から魚を受け取る。
においに耐えられなくて、かじってみた。
そしたら柔らかい身と絶妙な塩加減が――
――? 塩加減……?
え、めっちやしょっぱいんだけど。
冗談抜きで食えたもんじゃないってくらい。
「どうだ? 『前崎のスペシャル塩分増量魚』だ!」
「いやいや、めっちゃしょっぱいんですけど!?」
「いやー、高校生といえば青春じゃん? 青春といえば汗じゃん? 汗かいたら塩分でしょ!」
「青春といえば汗ってなんですか!?」
「ハハハハ! やっぱ康輝面白いな!」
なんも面白くないですよ!
「康輝、塩分過多になるのではないか……? ま、我のことではないからいっか。そして今回も我出てこなかったぞ……。そろそろセリフがほしいんだが。ではクイズだ! 『康輝は前崎先生とメールをしたことがある。◯か✕か』。◯✕はもう飽きたな……」




