第28話 美月の……
俺はポケットナイフを皆に向ける。
美月はこの光景をニヤニヤ笑いながら見る。
「? お主等、逃げないのか? 本気で死ぬぞ?」
美月がそう言ったとき、皆がやっと逃げる。
……あいつらは本気で走ってるんだと思うけど、俺からしたらめっちゃ遅い。
「ハァ……マジでムカつく」
俺はポケットナイフの刃をしまい、美月に返す。
「ありがとな。それ貸してくれたおかげでみんな逃げた」
「いや、礼を言うのは我の方だ」
……今すごくいいシーンだと思うけど、美月の言ってることがあまり理解できない。
なんで美月が礼を言うんだ……?
「……あ、それと新坂。これ、ありがとな……」
俺がクマのぬいぐるみを新坂に向ける。
そして、それを新坂に返そうとしたが……
「!」
新坂は慌てて俺からぬいぐるみを奪う。
それから新坂は全力で走り出す。
「……なんだあいつ……?」
「あいつはあれで良いのだ。そのうちお主の思うような者になるぞ?」
「? 何言ってるんだ、お前」
「まだ分からなくていい。……それよりお主、大丈夫か? ポケットナイフの刃を皆に向け、脅していたが……」
……あ、確かにヤバい。
「……ま、退学って言われたら大人しく退学するか。お前こそ大丈夫か? ポケットナイフ持ってたし……」
「まぁ、我が退学になる可能性はお主より低いがな。お主が退学になったら、我も共に退学するぞ」
「それはどうも」
おれと美月は互いに軽く笑う。
「あ、そろそろ授業始まる……」
「え!? マジ!?」
美月が驚いて言う。
しかし、美月以上に俺が驚く。
……え、今こいつ……
めっちゃ高い声だった……
いつもは『クール系のお姉さん』って感じの声だけど……今の声、『かわいい系の女の子』って感じだったんだけど……
「あ! ごめん、康輝! つい地声が……」
美月はめっちゃ高い声で言う。
これはこれで、かわいいのかもしれない……
「……ツッコミどころはたくさんあるけど……。まず、お前……これが地声なのか……?」
「う……うん……。……恥ずかしいから……あんまり……見つめないで……」
美月は顔を赤くして言う。
うん、かわいい。
「……お前……」
「べ、別にいいでしょ! こういう声なんだから……」
「いや、別に責めてないけど……。なんでいつもそんな声出さないんだよ?」
「……私、中学まで『メスガキ』で……。そのときのことを思い出したくなくて……」
え、こいつメスガキだったの!?
待って……美月がこの声で『ザッコ!』とか言ってたのか?
それはそれでかわいいけど……
「じゃ、またね!」
美月はそう言い、廊下を走る。
俺も急いで教室に向かう。
「我は室井美月だ。今回から作者のかわりに我が後書きを書く。今回は我の地声が出たな……少し恥ずかしかったぞ……。では、予告通り『天才美月ちゃんのクイズコーナー』をするぞ! まずは簡単なクイズだ。今作の主人公の名前は? フルネーム、漢字で答えろ。……簡単か? 答えられる者は感想で答えを教えてくれ! ……この物語、感想が一つもなくてな……。答えは次回の前書きに書くぞ! それと、明日も投稿する予定だ」




