第275話 釣り道具を借りに
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
ひなたさんの案で釣りをすることになった。
なんか向こうのほうにちっちゃい小屋があって、そこで釣りざおとかエサとか借りれるみたい。
ひなたさんはそこまで迷いのない足取りで行って、中にいる係の人と仲良さそうに話してる。
ちなみにひなたさんとその小屋に行ったのは俺と美月と水麗。
他のやつらは川で待ってる。
「さすがひなたちゃん……コミュ力あるね……!」
「美月ちゃんもコミュ力あると思うよ?」
「私……じゃなくて我か? そうでもないと思うが……。まぁ、康輝はコミュ力なさそうだな」
「なんでそうなんだよ」
「だってナンパするときソワソワしてたではないか。男子高校生たるもの、そういうのはきちんとできなければ」
「世の男子高校生がみんなナンパ上手いみたいな感じに言うな」
「みんなー、借りれたよー!」
ナンパの話で盛り上がってたら……いうほど盛り上がってないか。
ま、ナンパの話してたらひなたさんが来る。
大きなかごを持ってて、その中に釣りざおとかが色々と入ってる。
「これ、道具だよ」
「ひなたちゃん、重そうだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ、力もなきゃやっていけないから」
「でもひなたちゃんにそんな雑用似合わない……。我と康輝が持つよ!」
……は?
「え、でもそれじゃみんなに悪いし……」
「いいのいいの! 康輝、雑用好きだし」
いやいや、俺がいつ雑用好きって言った?
そんなこと言ってないぞ?
「えー、でも……」
「遠慮しちゃダメ。貸して」
美月はひなたさんからかごをほぼ強引に奪う。
そのときの美月の顔、一瞬だけマジの顔になってた。
そして俺の目を見て変な表情してる。
『これマジで重いよ!』って言いたそう。
なんか美月がかわそうになってきたから俺が運んでやるか。
こういうのは男の仕事って昔から言うしな。
……いや、今はこういう発言しないほうがいいか。
変に言っちゃうと男女差別とか言われちゃうし。
偏見とかってやっぱよくないよな。
「美月、貸せ」
美月がひなたさんにしたように、俺も美月からかごを奪う。
その瞬間にわかった、美月がなんであんな表情してたか。
これめっちゃ重い!
え、100キロくらいあるの?
いや、100キロは盛ったけど。
でもさすがに重すぎる。
釣りざおってこんな重いの……?
そしてなんでひなたさんはこれは余裕の表情で持ってた!?
「康輝くん……大丈夫……?」
「大丈夫……! 早く……みんなのところへ……!」
俺は無理してそう言ってゆっくりと歩き出す。
このかごに釣りざお以外になにが入ってるんだよ……!
「康輝ー、こういうときは『全然重くないよ、むしろ軽い』とか言わなきゃ。ではクイズだ! 『名字が『М』から始まるキャラは誰と誰?』。名前ではなく名字だぞー!」




