第273話 ひなたさん、到着
「前回のクイズの答えは『ショッピングモール』だ!」
「……full of nature……」
木を見てつぶやいてる前崎先生。
俺たちは今、まぁまぁ有名なキャンプ場にいる。
一応近くに川もあるし、反対側に行けば森がある。
ここでキャンプすることになって、ひなたさんとはここで集合することになってる。
そろより、前崎先生なんて言った?
『フルオブネイチャー』?
自然でいっぱいってことかな?
英語の教師って思ったことも英語で口に出しちゃうのかな?
「あー、先生! こんなとこまで来て英語ダメです! こういうときくらい勉強やめましょう!」
「お、そうだな、悪かったな、桃山!」
「はい! お詫びはチョコケーキで我慢してあげます!」
「そんなに俺の手作りチョコレート食べたいのか?」
「いや、ちゃんとお店で売ってる食べれるやつお願いします!」
こいつらはなんの話してんの?
……あ、先生に『こいつ』って言っちゃった。
ごめんなさい、もう言いません。
「康輝、それであの人はいつ来るんだ? もしまだ時間がありそうなら川で生物探してくるんだが……」
美月の言ってる『あの人』っていうのは、多分ひなたさんのこと。
あと15分くらいで集合時間になる。
「あと15分くらいじゃない?」
「そうか、まだ来ないなら川で――」
「ざーんねん、もう来てますよー」
横から声がする。
横を見ると不審者がいた。
……うん、不審者だよね?
帽子かぶってるしサングラスかけてるしマスクしてるし、顔全然見えない。
不審者だ。
……見た目で判断するのはよくないってことわかってるけど、やっぱり不審者だと思ってしまう。
だって……ねぇ……。
夜にこんなのが追いかけてきたら怖いもんねぇ……。
「久しぶり……ってほどでもないね。今日は来てくれてありがと」
その不審者はマスクとサングラスを同時に外す。
あー、整った顔だ。
いや、この人ひなたさんじゃん。
不審者なんて思ってごめんなさ――
「って、ひなたちゃん!?」
「やっほー、元気だった? 美月ちゃん」
「げ、元気だよ! ひなたちゃんは!?」
「私はいつも元気だよー」
「わ、私もげげげげげげ元気!」
あー、美月が壊れた。
憧れの人に会うと人間って壊れるものなのかな?
でもあの美月がこんなふうに壊れるって……。
本当に申し訳ないけど面白い。
動画撮って悲しいときに観ると笑えそう。
「康輝くんも元気だった?」
「はい、一応」
「敬語なんていいよ。普通に話そ?」
あ、優しい……。
それより、ひなたさんが来たことだし、キャンプ開始かな?
「やっとひなたちゃんと会えた! ……うん、それだけ。ではクイズだ! 『石川ひなたは康輝と同い年である。◯か✕か』。このクイズは初めてか……?」




