第369話 それで私……
「前回のクイズの答えは『コーラ』だ!」
「で、クジラの漢字に『魚』って漢字が入ってるのは――」
俺が美月の家に来てから10分くらい経った。
だけど、特に大切な話はしてないと思う。
ただ美月から生物に関する雑学っぽいやつを教えてもらってるだけ。
俺は……大切な話をさせられるためにここに呼ばれたんだよな……?
でもなかなかそのことを美月に言えない。
だって本人、本気で話してるもん。
話を遮っていいかわからない。
「――それで、魚に似てるからなの」
「そ、そっか」
「うん、次の話はね」
あ、まだ続くんですね。
別に予定ないからいいんだけど。
これいつまで続くんだろ……。
「それで、私に好きな人ができたかもしれないの」
「…………」
「…………」
あ、終わった?
美月も黙ってるし、これ終わったよね?
「……驚かないんだね……」
「ああ、驚いたぞ? クジラは魚類だと思われてたことがな」
「そっちじゃなくて! 最後のやつ!」
最後のやつ……?
『好きな人ができたかもしれない』ってやつでしょ?
別になんも――
「……って、えええええええぇぇぇぇ!?」
「やっぱ驚くんじゃん!」
「そりゃそうだろ! 驚くわ!」
「なんで今驚く!? 前も言ったけど、昔はそんな鈍感じゃなかったよね!?」
いや、今も鈍感じゃないと思うけど……。
ってか、こういうのって鈍感っていうのかな?
それより、美月に好きな人か……。
誰だろ……。
……あ、そうか、わかったぞ。
それは石川ひなたさんだ。
だって俺が最初に石川ひなたさんの話題にして、そこから美月は俺をここに呼んだんだ。
そういうことか。
「石川ひなたさん、だろ?」
「いや、あの人は好きっちゃ好きだけど、そういう恋愛対象としては見てない」
へー。
「康輝と仲良い人だよ?」
「俺と仲良い人?」
「大雅だよ、大雅!」
なんだ、大雅か。
あいつなら――
「……って、えええええええぇぇぇ!?」
「驚きすぎだよ! こっちが恥ずかしくなるじゃん!」
「あの喧嘩バカのこと好きになったんだ……」
「別に恋愛は自由でしょ!?」
「まぁ、そうだけど……」
ってか、なんで大雅のこと好きになったの?
美月って喧嘩する男がタイプ?
「なんで好きになって、いつから好きになったのかわからないんだけど、気づいたら好きだったの」
おお、ちゃんと恋愛してんじゃん。
美月、高校2年生で初恋?
……いや、初恋はありえねぇわ。
その前に俺のこと好きでいてくれたんだ。
「なんていうか……昔は平気だったんだよ? けど今は二人で話してると意識しちゃうというか……。どうすればいいかな……?」
おー、マジな恋愛相談だ。
でもこれって俺にする相談?
水麗とか、女友達に相談したほうがいいんじゃないの?
しかもどうすればいいって……。
大雅といったら喧嘩しか思いつかないからな……。
「マジで恥ずかしすぎるな、これ。特にコメントしたくないからクイズで。『大雅の好きなラーメンの種類は?』。ラーメン……」




