第261話 戻ろう、みんなのところへ
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
「あー、康輝たちどこ行ってたのー?」
海に戻ると、みんなが遊んでた。
あのあと、しばらく沈黙になってから前崎先生が『戻ろっか、悪かった』って言ってここまで戻ってきた。
今はもう、前崎先生が泣いていたことがわからないくらい、前崎先生は元気だった。
「お、お前ら楽しそうだな! 俺も泳ぐぞ! 康輝、水着に着替えるからついてきてくれるか?」
「……はい」
前崎先生は変な走り方で更衣室まで行った。
俺はそんな前崎先生にツッコまないで、ついていった。
「康輝も泳ぐだろ?」
「そうすることにしました、ついさっき」
「おう、でも無理すんなよ。風邪ひいたら笑えないから」
「先生も無理はダメですよ」
「わかってる。つらいときは思いっきり泣く。ただ俺はあのキャラで通す」
……本当にすごいよな、俺には絶対にできない。
本当の自分を隠して、偽りの自分を皆に見せる。
冬乃もそうだったな。
あいつといい先生といい、色々な面で尊敬できるよ。
「――よし、行くぞ。ついてきてありがとな」
気づいたら先生は水着に着替えてた。
先生は自分の頬を叩いてみんなのところに向かう。
俺も頑張らなきゃな。
「――あ、お兄ちゃん! 泳ぐ?」
みんなのところに行くと、最初に水麗が話しかけてくれる。
俺はできるだけ笑顔でうなずいて海に浸かる。
……ちょっと冷たいかな。
「お兄ちゃん?」
「なんだ?」
「どう? 海」
「うん、いいな」
「……お兄ちゃん」
「どした?」
「新しい発見があったの」
「へー。どういう発見だ?」
「海水ってさ、しょっぱいね。さっきがぶ飲みしたけど」
「ん!? お前そんな飲んだの!? ちょっ、脱水症状とかにならない!?」
「……よかった」
水麗が微笑んでそう言う。
「いつものお兄ちゃんになってくれた。なんか元気なかったよ? せっかくみんなと来たんだから楽しも?」
水麗は俺の手を握る。
そうすると、俺も元気が出てきた。
「……そうだな!」
「うん!」
「お、このままやっちゃう!?」
なんか俺と水麗の間に冬乃が入ってくる。
正直に言っちゃうと、殴りたくなるような感じの表情浮かべてる。
めっちゃニヤニヤしてる。
「キスとかしちゃう?」
「し、しねぇよ!」
「えー、つまんな」
「どこがだよ!」
「そうだよ、お兄ちゃんつまんないよ!」
「お前までなに言ってんだよ!」
「おー、康輝いいじゃねぇか。キスしてもらえ!」
「先生も!」
わざとらしくツッコむ。
それでみんな笑ってくれる。
……これでいっか、みんな笑ってくれるし。
「我が登場しないぞ……。なぜ水麗と冬乃は登場するのに……。そろそろ我もはしゃぎたいぞ……。ではクイズだ! 『去年(康輝が1年生)のときの将棋部の部員数と、現在の将棋部の部員数は同じである。◯か✕か。また、◯の場合はその部員数を、✕の場合は部員数の差を答えよ』。! 泣いているシーンじゃない! そしてクイズが長い!」




