第213話 肝試し、始まり
「前回のクイズの答えは『✕』だ……」
地下体育館の出入り口にいる先生のところで説明をしてもらった。
『怪我に気をつけろ』くらいしか言われなかった。
それと、懐中電灯を人数分もらった。
階段に出たけど、めっちゃ暗い。
今はもう外暗いし、電気切られてる。
マジで懐中電灯ないとなんも見えない。
「屋上に行くんだよね? 1回でいいから私、屋上に行ってみたかったんだー」
「絶対怖いやつあるよ……」
明るい冬乃と暗い水麗。
そういえば水麗ってホラー嫌いだったな。
「おお! 康輝! 壁すごいぞ!」
美月が興奮してる。
言われた通り、壁に光を当ててみる。
うわー、赤黒い液体がベットリ付いてる。
これって先生たちがやったのかな?
お疲れ様です。
「ちょっと……、早く行こ……?」
「なんだ、水麗? 怖いのか? 怖かったらこの先生に抱きついてもいいんだぞ!」
「それだけは嫌です」
おお、そこだけハッキリ言うんだ。
あ、そういえば罰ゲーム……。
「そういえば罰ゲームだ! それが対象の生徒が多すぎるから、残念ながら罰ゲームはなしになった!」
それはよかった。
前崎先生と二人で遊園地は嫌だもんな。
それより、さっきからずっと階段のぼってるけどなんも起こらない。
誰かが脅かしてくる気配もない。
「……なんか聞こえない?」
水麗が立ち止まる。
「さっきから一定のリズムで……」
「そうか? なんも聞こえねぇけど」
大雅が懐中電灯で周辺を照らす。
確かになにもないし、聞こえない。
「……なんかだんだん大きくなってる……!」
いや、なんも聞こえない――
――いや、聞こえた。
『タッタッタッ』って。
なんか最近この音聞いた気がする。
「……康輝、これ、あの音ではないか!」
美月が振り向いて、そこに光を当てる。
みんなが一斉にそこを見る。
赤黒い液体がベットリついた包丁を持ってる女の人がいた。
……あ、思い出した。
この人、数Bの先生だ。
その先生は鬼みたいな表情でこっちに向かってくる。
正直、今まで見てきた中でも1番怖い。
「ちょ、急に来るのは反則!」
水麗が誰よりも速く階段を駆け上がる。
みんな必死になると本気出せるんだな……。
俺も怖いから逃げよ。
そう思って、階段を駆け上がろうとする。
そしてあることに気づいた。
脚が痛い!
筋肉痛みたいな感じ!
……まさか、『裏切り鬼ごっこ』で脚に負担かかりすぎた……?
もっと日頃運動しておくべきだった……!
みんなが俺を追い越す。
ヤバい……、みんな待ってよ……!
あの先生、多分マジで刺してくる……!
「全員懐中電灯を消せ!」
白斗の声が響く。
「なんで!? 私怖いよ!」
「康輝のためだ!」
……そういうことか。
サンキュ、白斗。
『康輝のため』って聞こえた瞬間、みんな懐中電灯のスイッチを切った。
俺もそうした。
そしたら当然、真っ暗になる。
俺は踊り場まで行って、隅に行く。
これでなんとかなってくれれば……!
「数Bの先生怖すぎるだろ。包丁持ちながら追いかけてくるのは犯罪ではないか? それより、まさか『裏切り鬼ごっこ』が役に立ったな。あれでも階段で追われたからな。あれがなかったら、あの音が追われている音だとは気づかなかったぞ。ではクイズだ! 『去年の文化祭の1組の出し物の買い出しをしたのは誰?』。我は2組だったからな。それと、もしかしたら作者の都合で投稿できない日があるかもしれない」




