第212話 肝試し?
「前回のクイズの答えは『前崎先生』だ!」
午後7時になった。
全員地下体育館に呼び出された。
さっきまで教室で自由時間だったけど、なにもすることなかったから暇だった。
やっと面白そうなのあるな……。
「では『肝試し』をやります! 屋上にある日本人形を取ってきて、地上体育館に行くことです! 何人で行ってもかまいません! 最初に人数分の懐中電灯を渡します! 準備が整ったお方から地下体育館の出入り口に行ってください! 先生方から説明がありますので!」
俺の横で香菜が叫ぶ。
香菜の隣には俺と叶太。
俺たちは今ステージの上にいる。
……毎回思うけど、これって俺の存在価値ある?
今のところなんもしてないよ?
あとこれも毎回思うけど、香菜、マイク使おうよ。
叫ぶの大変じゃない?
俺は一応実行委員だから、最後に行くらしい。
みんなが行くまで待つ。
また暇な時間だ……。
「……では、私たちも行きましょうか」
残ってる人数が少なくなってきてから香菜が言う。
やっと終わった。
大雅たちも待ってくれてるみたいだ。
それより気になるのが、大雅だけみんなと話してない。
みんなは楽しそうに他の人と話してるのに、大雅だけ俺をずっと見てる。
どうしたのかな……?
「もう行っていいんだよな?」
「はい、どうぞ」
俺は全速力で大雅のところまで行く。
マジであいつ、まばたきしてない。
俺が近づいても無反応。
マジで大丈夫か……?
大雅の顔をのぞくように見てみる。
そしてあることに気づいた。
こいつ、目開けながら寝てやがる。
実際にできるんだ、目開けて寝ること。
目、めっちゃかわくだろうな……。
いや、それより起こさな――
「おーい、風崎!」
大雅に触ろうとしたら、どっからか前崎先生が出てきて大雅に抱きつく。
「お前と一緒で、先生嬉しいぞー!」
「…………」
……うるさ、先生。
それでもまだ寝てる大雅すごいわ。
「康輝も! 先生嬉しいぞ!」
「それはどうも……」
「それにしても懐かしいな! 肝試しなんて!」
「そうですか……」
「なんだぁ? ノリ悪いな!」
「もうお化け屋敷にはトラウマしかないんですよ……」
蘇る記憶。
遊園地とプールのお化け屋敷でマジの心霊体験したもんな。
でもあれはきっとあの場所が呪われてたんだ。
うん、きっとそう。
今度は学校だから大丈夫。
「さ、楽しもうぜ! 昔もそうだったろ? お化けとかそういうの興味ないのか?」
「確かにちっちゃいころは少しだけ興味ありましたけど……。すぐに興味なくなりましたよ」
だってうちはあんま金なかったから。
そういうのは『わがまま』になると思って、全部に『ほしい』とか『興味』をなくした。
……ああ、こういうの考えんのやめよ。
今は違うんだ。
今は楽しまなきゃ……。
そうじゃなきゃ、父さんにも、芽依にも悪い。
「大雅……、起きろ……。まったく、これだから……。……あ、でもたまにかっこよくなるんだよね。うん、かっこいい……。……あ、別にああいうのじゃないよ!? クイズね! 『芽依は他殺によって命を落とした、◯か✕か』! ……なんかこういう雰囲気で出すクイズじゃないね」




