第211話 カレー食べるだけ
「前回のクイズの答えは『バーベキューのとき』だ……」
うん、このカレー美味いわ。
そりゃそうだな、だってレトルトカレーそのままだもん。
黙って大雅と二人で食べてるけど、なんか気まずい。
女子たちは楽しそうに食べてる。
男子と女子で別行動してるときに、なんか面白いことがあったとしか思えない。
俺たちがいない間なにがあったんだよ……。
「なぁ、康輝」
「どうした?」
「レトルトカレー初めて食ったんだけどさ、想像より美味いわ」
「そっか、よかったな」
「なぁ、康輝」
「今度はなんだ?」
「喧嘩しよう――」
「嫌だ」
まったく、少しは成長したと思ったらすぐ喧嘩……。
最近かっこよくなったと思ってたのにな……。
「……ねぇねぇ康輝くん」
冬乃が来る。
もう食べ終わったのかな?
早いな。
「このあと肝試しあるじゃん? みんなで行こ?」
「肝試し……? そんなのあったか?」
「え、できたじゃん」
え、知らないんだけど。
「急遽変更になったんだ」
叶太も来る。
「そう聞かなかった? おととい」
「聞いてないんだけど」
「実行委員だよね?」
「一応」
……実行委員なのになんも言われなかったの?
「準備とかは先生がやってくれたから、生徒たちはなにもする必要はないって。じゃ」
そう言い残してどっか行く叶太。
マジでなんも連絡されてないんだけど……。
「康輝くん、知らされてなかったんだ……」
「前崎の先生から嫌われてんじゃね? お前」
「かもしれない……」
なんなんだ、この気持ちは。
現代文のテストの『このときの筆者の気持ちを答えろ』って問題より言葉にするのが難しい。
「で、一緒に行ってくれる?」
「ああ、もちろん」
「今のところいつものメンバーだけど、他に誘いたい人がいたら誘っていいよ」
「あー、別に思いつかな――」
「前崎先生も生徒と一緒に行くんだって」
前崎先生!?
あの人も生徒と一緒なの!?
お化け役とかじゃなくて!?
「あ、俺行きたい、前崎の先生と」
「おー、大雅くんがそんなこと言うなんて珍しいね。なんで?」
「罰ゲームのことで色々ききたい」
罰ゲーム……?
……ああ、『裏切り鬼ごっこ』のやつか。
確かにあのことはよく質問しなきゃ。
「で、康輝くんはどうする? 前崎先生と一緒でいい?」
「俺は別にいいけど……。でも大丈夫? 俺たちの他にも、先生と一緒がいいって人いない?」
「大丈夫だって。みんな先生と一緒は嫌みたいだよ」
うわ、なんかかわいそう。
前崎先生となら面白いことになりそうなのに……。
「なんか前崎先生嫌われてるみたいな感じだな。それより大雅、レトルトカレー初めて食べたのか。なんか意外。ではクイズだ! 『前崎先生と皆嘉、どちらが最初に登場した?』。久しぶりだな、こういうの」




