第207話 暇
「前回のクイズの答えは『前崎先生と恋人のフリして二人で遊園地』だ!」
「……康輝くん、なんか面白い話して」
「……無理……」
ここに入ってからめっちゃ時間経った。
マジで暇。
なぜかこの教室に時計ないから時間もわからない。
マジで暇すぎる。
「……お兄ちゃん、今日の夕飯なにがいい? なにつくるか考える」
「……うーん、今日の夕飯はこの学校のみんなでつくると思うんだ」
「あ、そっか」
「美月……、今日の部活、いつから……?」
「今日部活ないぞー……」
暇すぎてみんな変な会話し始めてるし、ボケ始めてる。
それにしても本当に暇だな……。
「――おい、あとお前らだけだぞ! 早く捕まりやがれ!」
外から声がする。
あー、やっと鬼が来てくれた。
暇で暇で仕方なかった。
しかも今、『お前らだけ』って言ってた?
俺たちしかいないの?
マジか。
ってことはあとちょっとで終わるな、このゲーム。
「……もうこの際いいや、康輝くんだけでも逃げて。私がおとりになるから」
「時間的に、あと少しで終わるらしいな。康輝だけでも逃げるほうがいい。……あ、あとついでに大雅も」
「そうだね、お兄ちゃんだけでも逃げて」
いや、なんでそうなる?
みんなで逃げようよ。
一人で逃げるの嫌だし。
「康輝、お主今『皆で逃げる』と思ったか?」
「ま、まぁ……」
「皆嘉はどうなる?」
「…………」
「皆で逃げるのは不可能だ、多分。残りは我等しかいない。つまりほぼ全部の鬼が我等にしか向ってない。そんな数の鬼から逃げれるとは思えない。だから『皆で捕まる』か、『誰か一人だけ逃げる』しか選択肢がない」
皆嘉、か……。
それ言われちゃうと否定できないな……。
「……そうだな、康輝だけでも逃げなきゃな」
大雅……。
「こう見えてもスピードには自信ある。よし、おとりは任せろ!」
「全員で逃げるよ! せーのっ!」
冬乃が廊下に出る。
それと同時にみんなも出る。
……なんかこれ、みんなに合わせなきゃダメなやつだ。
鬼のやつらがみんなにかまってる間に逃げよ。
なんか廊下でガヤガヤ聞こえる。
……そろそろいいだろ。
俺は廊下に出る。
鬼たちは大雅、水麗、美月、冬乃のところに集まってて、廊下を渡れそう。
そこを全速力で走る。
おー、学校全速力で走ってる。
なんか楽しい。
このまま逃げれば――
そう思ってたら、目の前に誰かが立つ。
男子生徒だ。
……いや、こいつ……、皆嘉……?
申し訳無さそうな顔をしている皆嘉がいた。
「ごめん、康輝」
皆嘉はそう言う。
びっくりして動けなかった。
そして、誰かが俺の背中を触る。
鬼の仮面を被った、男子生徒だった。
「皆嘉ー、久しぶりの登場だ! 最後に登場したのはイヤホンぶん回したときだったな! ではクイズだ! 『康輝は演劇をやったことがある、◯か✕か』。演劇、ね……。演技力、大事だよね」




