第205話 この中にいる
「前回のクイズの答えは『康輝、水麗』だ!」
全員の動きが止まった。
冬乃はその反応を見て楽しんでるように笑ってる。
「ここで私たちを捕まる? だったらその『裏切り者』の名前、大声で叫んじゃおっかな?」
「そ、そんなの――」
「これはルール違反? でもルール説明ではなんも言われなかったよ? 『そんなの常識だから言う必要ない』って思ってる? 確かにそうかもね。でもね、それはルール違反にはならないと思うんだ。退場はしない、そしてみんなから『常識がないやつ』って思われるだけ。去年一緒のクラスだった人はわかるでしょ? 私は『常識のないバカ』ってこと」
うっわー、めっちゃスラスラ話すな。
「……なんか言ったら? 沈黙気まずいし。……わかったよ、大声で叫ぶのはやめる。でも答え合わせはしたいな」
「……それならいい。じゃあ捕まえる」
んー、冬乃?
捕まっちゃいますよ?
「この階には逃げる人が数人隠れてる、そのこと頭にいれたうえで今の決断した?」
「……どういうことだ?」
「だーかーらー、『その人たちには聞こえるよ』って言ってんの。それを頭にいれた?」
「それは……」
「多分、その『裏切り者』は私しか気づいてない。だって隠すの上手いんだもん。まさかこの人が『裏切り者』だとは思ってなかったなー」
「…………」
「どうする? ここで見逃して上手な『裏切り者』を守るか、上手な『裏切り者』を捨てるか。選んでいいよ?」
「…………」
「だから沈黙になるのやめない? ……わかったよ、10秒だけ待って。その間に私たちが逃げるから」
冬乃は教室の中に入る。
俺たちも入った。
冬乃はカーテンと窓を開ける。
光が眩しい。
「康輝くんたち、水道管渡ってたよね? 私もやってみたかったんだー」
冬乃は窓から外に出る。
すぐ下に水道管があるから、飛び移る必要がなかった。
奇跡的にすぐ近くには非常階段がある。
そこまで行く気か……。
確かに、これくらいなら水麗や美月、冬乃もできそうだ。
冬乃は壁に手をつきながら行ってる。
「水麗、行くぞ」
「……めっちゃ怖かった……」
顔青くしてる水麗。
そんな怖かったか?
「休んでる暇ないよ」
冬乃は非常階段を駆け下りる。
俺たちもついていった。
「……よくあんな嘘思いついたな」
走りながら冬乃に言う。
「……嘘じゃない」
「え?」
「嘘じゃない。『裏切り者』はいた。確信はなかったけど、あの鬼たちの反応で確信に変わった」
どういうこと?
あの中に『裏切り者』が……。
「今、ここにいない人がいるでしょ?」
俺は後ろを見る。
……そうか、わかった。
影薄いから目立たなかったけど。
「『裏切り者』は――」
「――白斗だよ」
「おお! とうとう『裏切り者』がわかったぞ! そして冬乃が冬乃らしくない! なんか嫌だ! ではクイズだ! 『白斗が『裏切り者』とわかったのは第何話?』。白斗がね……」




