第197話 皆嘉
「前回のクイズの答えは『キャバクラ』だ! ……我の意思ではないぞ?」
「……ここら辺にいるかもな」
鬼たちの声がする。
俺は教卓を壁にして隠れてる。
なるべく気配を消すように……。
皆嘉はカーテンに隠れてる。
バレなきゃいいけどな……。
「……いないな」
鬼たちがそう言い残して教室から出ていく。
意外とあっさり終わったな。
しばらくしてから俺は教卓から出る。
皆嘉はまだカーテンのところに隠れてる。
「皆嘉、終わったみたいだぞ」
俺が言うと皆嘉が出てくる。
「意外とあっさり終わったな」
「そう……だな……」
「やっぱりいた!」
出入り口から声がする。
さっきの鬼の声だ。
その方向を見ると、数人の鬼たちがいた。
……やっぱもうちょっと隠れてるべきだったな。
俺がすぐ喋ったからバレたのかな?
「……康輝、逃げろ」
皆嘉が俺に聞こえるギリギリの声で言う。
そしてポケットからなにかを出す。
有線のイヤホン……?
皆嘉はその先端を持って、それを振り回す。
「少しだけでも時間は稼げる。行け」
「なに言ってんだよ……。二人で逃げるぞ」
「いや、二人で移動すると目立つ。康輝だけでも逃げろ」
「大丈夫だ、俺たちなら。だから――」
「俺は足手まといになる」
皆嘉は右脚のズボンの裾を上げる。
右脚に血がついてる……?
「ちょっと転んだんだ。俺は上手く逃げられないかもしれない」
「…………」
「早く逃げろ。このイヤホン、意外と硬いんだぞ? これで攻撃くらいできる」
「でもそれじゃ――」
「ルール違反になるかもな。でも、そんなこと言われてない」
いや、確かにそうだけど……。
「どっちにしろ捕まるんだ。せめて康輝の役に立ちたい。わかったら逃げて。康輝には水麗もいる」
「……本気か? 皆嘉」
「本気に決まってるだろ?」
「……サンキュ、助かった」
俺は窓から降りる。
その瞬間、最後に教室を見た。
皆嘉がイヤホン振り回しながら鬼に向かってた。
俺は水道管の上に立つ。
そして上手く移動して下の階まで行って、教室の窓を開ける。
……今思えば、鬼も待ってくれてて優しいな。
襲いかかってきてもおかしくなかったのに。
でも、多分俺も鬼の立場だったら捕まえてなかっただろうな。
あんなドラマみたいなシーン見たら、皆嘉にかっこつけさせてやりたいもんな。
アニメとかで『なんだよこの敵、早く攻撃しろよ』とか思ってたけど、こういう理由もあるのかな?
俺は最後に、皆嘉がいる教室の窓を見た。
……こんなことしてる暇ねぇな。
せっかく皆嘉が助けてくれたんだ。
絶対に逃げ切ってやる。
皆嘉の分まで。
……皆嘉、脱落か……。
「みんな、よく考えてほしい。イヤホンを振り回す……。なんかとても……なんとも言えない格好だな。それと、鬼に攻撃なんてしたらルール違反だろ……。作者も読み返してて笑ってたぞ。ではクイズだ! 『1年生のときの冬乃のクラスの出し物は?』。それと、作者の期末考査が近いため、しばらく投稿ができない。本当にすみません」




