表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/348

第196話 頑張って逃げる

「前回のクイズの答えは『お化け屋敷』だ! 定番だな!」

 「なぁ……、お前らここにいていいのか?」


 俺は両手を挙げながら二人に言う。


 「いや、お前から離れたら、お前逃げるだろ」

 「だーかーらー、俺が逃げないように、ここにいんなって言ってんの」


 俺の言葉でさらに混乱した鬼たち。

 確かに、俺の説明不足だ。

 でも少しでも時間を稼いで、工芸室に向かってる鬼たちをここから離したい。


 「この教室から出られるのはそこの出入り口だけだ。出入り口の幅は狭い。だからお前らが一人ずつそこに立ってれば、俺はどう頑張っても出られないだろ」

 「……あなた、怪しい。なんで自分が不利になることを自ら言うの?」

 「言ったろ? 俺は『裏切り者』で鬼の味方だ」

 「……本当に鬼の味方みたいだね」


 二人は俺に背中を見せないまま教室の出入り口まで行く。

 『背中を見せないまま』ってことは、ずっと俺を見たまま歩いてた。

 つまり後ろ向きで歩いてた。

 笑いそうになった。

 ってか、ちょっと笑った。


 でもこれのおかげで俺は逃げれそうだ。

 だけどあの逃げ方、怖いんだよな……。

 落ちたら怪我しそうで。


 ま、やってみよ。


 俺は両手をおろす。

 鬼は俺を警戒する目で見る。

 心の中で『なにしようとしてるんだ? そっから逃げれるわけないのに』って思ってくれたら嬉しいな。


 俺はすぐに窓を開けて、そこから降りる。

 鬼はすぐに俺のところに来る。

 今来ても意味ないのに……。


 俺はもう水道管の上に乗ってる。

 それにしてもこの水道管、丈夫だな……。

 結構上から落ちてきても耐えれてるんだから。


 とにかく、早く逃げなきゃ。

 俺はちょっとだけ移動して、窓が開いてる教室の中をのぞく。


 そこには誰かがいた。

 誰かが背中を見せてる。


 鬼ではなさそうだ。


 俺は教室の中に入る。

 すると、そいつは驚いた表情をして俺を見た。

 皆嘉だ。


 「康輝……」

 「よ、皆嘉」


 俺は皆嘉に近づく。


 「びっくりした……」

 「そんなか?」

 「マジで鬼かと思った」

 「そっか。で、一人か?」

 「ああ、みんなと離れた。さっきまで美月と一緒にいたんだけど、鬼が来て……」


 そこで美月とわかれたのか。

 多分、鬼は美月のほうを追いかけたんだな、皆嘉じゃなくて。


 美月なら逃げれるかな……?


 「とにかく、康輝だけでも捕まってなくてよかった」

 「ああ、こっちもお前がまだいてよかった」

 「俺も鬼に今追われててな。多分、この教室の中にいるってことはバレてる」

 「マジか……。逃げるか?」

 「いや、もう走りたくない。隠れる」


 俺は教室の中を見渡した。

「なんか『水道管の上に乗る』って表現なんだが、『配管』や『配水管』と言う者もいるらしい……。小学校でよくある、あの灰色のむき出しになってるやつだからな……? 伝わるかな……? ではクイズだ! 『1年生のときの美月のクラスの出し物は?』。あれは恥ずかしかったな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ