第193話 屋上に逃げた
「前回のクイズの答えは『◯』だ! 最近白斗のメガネの描写なかったからな……」
屋上に着いた。
見た感じ、誰もいなさそう。
確かに、一見逃げ場がないように見える。
でも、今の俺たちは縄を持っている。
ここら辺に縄引っ掛けといて、そこから縄を落として、それを伝って他の階に移動できる。
「やっぱ眺めいいなー。こっからなら鬼見下ろせるな」
「それもある。それより、この縄を――」
「いたぞ!」
後ろから声がする。
振り向くと、大量の鬼が出入り口の前にいた。
一斉に俺たちに向かってくる。
クソがよ……、まだ縄準備できてねぇのに……。
鬼は大量にいる。
……多分、俺か大雅、どっちか捕まるかもしれない。
「なんだ、康輝? 諦めてんのか? 動いてねぇけど」
「……んなわけじゃねぇけど……」
「似合わねぇぞ、お前に。喧嘩もそうだろ? 最初から諦めて攻撃喰らうのか?」
「……そうだな」
俺は思わず微笑む。
大雅にこんなことを教えてもらうとはな……。
でもどこから逃げよっかな……。
掻い潜って出入り口から逃げるのは難しそう。
じゃあ一つしかないな……。
「落ちるなよ、大雅」
「わかってる。落ちそうになったらすぐ他のとこ行くから」
俺と大雅は同時に鬼に背中を見せる。
そしてすぐに柵を登った。
一歩踏み間違えたらすぐ落ちる。
鬼は一瞬だけ驚いて動きが止まってたけど、すぐに追いかけてきた。
俺は下を見る。
足場になりそうなのは結構ある。
さっき乗ってた水道管もある。
俺は深呼吸をしてからそこに飛び移る。
ギリギリ乗れた。
最近こういうのしてないから、やり方とか忘れてそうだったけど上手くできた。
大雅も同じところに落ちてくる。
「逃げれたな、康輝」
「まぁ、そうだな。とりあえず、離れたやつと合流するか。どっかの教室にいるだろ」
俺は目の前にある窓から教室をのぞく。
3年2組の教室らしい。
見た感じ、誰もいない。
窓に鍵は……、かかってない。
俺は窓を開けて、その中に入る。
大雅もそうした。
「――お兄ちゃん?」
どっからか水麗の声が聞こえたような気がする。
声が聞こえたところに行くと、水麗がいた。
教卓のとこに隠れてたみたい。
「水麗……、他のみんなは?」
「離れちゃって……、数人捕まっちゃったみたい……」
「そっか……、でも白斗はまだ捕まってなさそうだった。それにみんな上手く逃げるだろ。ああ見えてもあいつら、意外と変なこと思いつくから」
「……そうだよね、きっとまだ逃げてるよね」
水麗は自分を納得させるようにうなずく。
とりあえず、水麗とは合流できた……。
「もう康輝と大雅の行動が理解できない。なんで屋上から落ちて水道管に上手く乗る? これは恋愛小説だぞ? 一応。ではクイズだ! 『大雅のあだ名は?』。……これはあだ名というのか……?」




