第186話 いよいよ今日
「前回のクイズの答えは『水麗の父』だ!
終礼が終わった。
今日は土曜日だから、4限で終わった。
いつもならすぐ帰れる。
でも今日は帰れない。
学校で宿泊会とか意味わからないことするから。
でもそれをするのは2年生だけみたいで、1年生と3年生はもう帰ってる。
そして、なんか弁当が支給されてる。
みんなそれぞれ教室で食うみたい。
今は13時か……。
俺は冷めた弁当を食う。
……こんなこと言っちゃあれだけど、水麗のつくった料理のほうが美味いわ。
「康輝、このあとなにをするのだ?」
食ってたら、後ろから美月が話しかけてくる。
もう食い終わったのか……。
「なんか『裏切り鬼ごっこ』するらしい。3時からだけど」
「おお、あと2時間もあるではないか。その時間は自由か?」
「らしい」
「ほぅ、では康輝、少しついてきてくれないか?」
どこに?
ま、いっか。
実行委員の集まりも14時からだし。
俺は弁当の残りをできるだけ早く食べた。
そして前を歩いている美月についていく。
めっちゃ階段のぼってるけどどこ行くんだろう……。
「――ここだ」
美月はとある教室の前で立ち止まる。
『生物実験室』……。
数回しか入ったことないけど。
「勝手に入って大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。では行くぞ」
美月は中に入る。
俺も中に入った。
実験室特有のにおいがする。
別に好きなにおいじゃないけど、嫌いでもない。
この感じわかる?
「まぁ、ちょっと座ってくれ」
実験室のあの背もたれがない椅子に座る美月。
背もたれがない理由、すぐ動けるようにするためらしい。
俺は美月の隣に座る。
「なんか相談か?」
「そんなもんだ」
マジか。
冬乃にも相談されたばっかなんだよな。
美月の相談か……。
どんなんだろう……。
「……私さ」
地声になる美月。
やっぱり高いな……。
「多分……、ってか、絶対に好きな人がいたんだよね」
「そうか」
「その人、目の前にいるんだけど」
目の前?
……近くに水槽がある。
その中で金魚が泳いでる。
……あ、金魚に恋してたんだ。
さすが生物オタク。
「……もしかして、あの金魚だと思ってる?」
「違うのか?」
「人じゃないじゃん! 同じ脊椎動物だけど、あっちは魚類! ヒトは哺乳類!」
なんか詳しい解説返ってきた。
「……じゃあ……」
俺は奥にある人体模型を見る。
「人体模型でもないから! そもそも生物じゃないじゃん! 生物の定義満たしてない! 細胞でできてないし、代謝しないし! ATPとかDNA、ADPもないじゃん!」
本当に詳しい解説返ってきたな。
今の解説だけで生物基礎の最初のほうは復習できそう。
ってか、じゃあ誰になるんだよ……。
そう思って、俺は美月を見る。
そして美月は言った。
「康輝のことだよ! 康輝!」
「なんか我の意外な告白が来たな……。とうとう我も春が来たのか……。ではクイズだ! 『美月は作中で、大雅と二人きりになった描写がある、〇か✕か』。……ほぅ、この問題か」




