第182話 キャラ作り
「前回のクイズの答えは『冬乃』だ!」
「結構『演技』って疲れるんだよね」
苦笑しながら言う冬乃。
なんか見ててつらい。
「なんで『演技』してるんだ?」
「私のね……、大好きだった人が言ってくれたんだ……。『俺みたいに他の人も楽しませるように、いつもニコニコして、嫌なことはすぐ忘れられるような人間になりなさい』って……」
どんどん声が小さくなってくる冬乃。
でも、はっきりと聞くことができた。
「『大好きだった人』……?」
「私のおじさんなんだけどね……、いっつも笑顔で……、みんなを楽しませることができる……、人なの……」
冬乃のおじさん、か……。
冬乃はそのおじさんの真似をしてるのかな?
確かに、冬乃といれば勝手に元気は出てくる。
ちょっと落ち込んでたり、悩んでたりしても、冬乃といれば忘れられる。
「で、そのおじさん……、死んじゃったんだ……」
また沈黙になる。
なにを言えばいいのかわからなかったから。
「私はね……、そのおじさんが大好きだったから……、言う通りにしたの……。高校生になってから元気でバカキャラ演じてね……。でも、今考えると、『私なんにもできてなかったな』って……。元気にさせてあげるはずなのに『ウザい』とか思わせちゃって――」
「俺はそうは思わないぞ?」
冬乃の声を遮って言う。
本当はそんなことするつもりはなかった。
でも、勝手に口が動いた。
「むしろ冬乃といて楽しい。ずっと笑顔でいれる冬乃はすごいと思う」
「でも康輝くんが知ってる『桃山冬乃』は、本物の『桃山冬乃』じゃない。偽物の『桃山冬乃』なんだよ」
「本物とか偽物とか関係ないと思う。冬乃が表現した『桃山冬乃』が、俺にとっては『桃山冬乃』なんだ」
俺が言い終わると、冬乃は黙る。
俺はなにを言えばいいのかわからなかったけど、口が勝手に動いた。
「冬乃が表現したい冬乃を表現してほしい。俺はどんな冬乃でも、それを受け入れる」
「でもウザいよね……? いっつもバカしてて……」
「全然そう思わない。水麗も美月も大雅も皆嘉も、白斗もきっとそうだ」
「……本当?」
「ああ、嘘はつかない」
また沈黙になる。
今度は俺は喋らなかった。
「――康輝くん、お腹空いてる?」
唐突に訊く冬乃。
急になんだ?
「ま、まぁ……」
「お父さん! 担々麺二つ!」
冬乃が奥に向かって叫ぶ。
そしたら『オウ!』って聞こえてきた。
「ありがと、康輝くん。その言葉聞けて……嬉しいよ……」
まただんだん声が小さくなる冬乃。
そして冬乃の目から、大粒の涙が落ちる。
何粒も落ちた。
やがて冬乃は声を上げて泣いた。
それはきっと、厨房で担々麺をつくっているお父さんにも聞こえただろう。
「作者の中間考査が終わったみたいだ! ……2つの意味でな! そしてなんか思うことがある。最近白斗出てない……。ではクイズだ! 『作中で康輝が冬乃のラーメン屋で頼んだ料理は?』。覚えておるか?」




