第173話 新しい担任
「前回のクイズの答えは『美月、冬乃』だ!」
時間になった。
みんな席に座ってるけど、隣の人とかと喋ってる。
そしたら前崎先生が堂々と教室に入ってくる。
また前崎先生が担任か……。
「よお! 俺は担任の前崎! よろしく!」
もうちょっと丁寧にやりましょうよ……。
みんなもまだ喋ってて話聞いてなさそうだし。
「まず始業式で校長から話があるらしい! なんかリモートでやるみたいだから、寝てもバレないからな!」
まず寝ちゃダメでしょ。
先生はどこからかリモコンを出して、それをテレビに向けて電源ボタンを押す。
すると、テレビがついた。
画面にドアップの校長の顔面が映る。
ちょうど校長が話してる最中だったらしい。
相変わらず髪型がバーコード。
校長の話が終わった。
よく聴いてたつもりだけど、あんまり理解できなかった。
なんか『パンにジャムを塗る理由』って話があったことは覚えてる。
「はい、じゃあ次、自己紹介するか! ……でも、自己紹介しなくてもだいたいわかるよな! わからないやつがいたら、あとでそいつに直接訊け! それじゃ、ロッカーを指定する! 出席番号のやつを使え! 学校案内は必要ないよな! じゃあパス!」
え、なに?
先生急いでるの?
めっちゃ説明省くじゃん。
もうちょっとゆっくりやろうよ……。
「あとは……、犯罪だけはやめろよー? 万引きとかしたらヤバイからな! あと事故も気をつけろよ? 最近高校生の事故死亡率上がってるらしいから! 多分! うん、じゃ、今日は終わり! 解散!」
……マジで?
まだ校長の話終わってから3分も経ってないよ?
先生急いでるの?
「前崎先生ってこんなに早く終わらせる人だったっけ?」
後ろから水麗が話しかけてくる。
それと同時に前崎先生もどっか行っちゃった。
「いや、ちゃんと説明しなきゃいけないことはちゃんと説明する人だと思ってたけど……」
「『解散』って言ってたよね……? ってことは帰っていいの……?」
「みたいだな……」
俺は教室を見渡すけど、誰も席を立ってない。
大雅以外みんなポカンとしてる。
大雅は寝てる。
結構気持ちよさそう。
これからどうすればいいんだろ……。
みんなが席立つまであんまり教室から出たくないし……。
……いや、出よう。
こんなとこにいるより、早く帰りたい。
「水麗、俺、帰る……」
「じゃあ、私も……」
水麗と俺は席を立つ。
みんなまだ座ってる。
いや、なんだよ、この空気。
「ほう、担任は前崎先生か……。我はいがいと好きだぞ? それより、校長の話が『パンにジャムを塗る理由』って……。ではクイズだ! 『去年1組でなかったのは美月と冬乃だが、2組だったのはどっち?』。覚えておるか?」




