第172話 新しい組
「前回のクイズの答えは『生物』だ!」
4月9日。
春休みの間は驚くくらいなにもなかった。
「――あ、お兄ちゃんと一緒じゃん」
校舎に貼られてる、クラス分けの紙を見ながら水麗が言う。
確かに、俺の名前の下に水麗の名前がある。
俺と水麗は1組か……。
名前は出席番号順に書いてあるみたいだ。
俺の名前の隣に『13』って書いてあって、水麗の名前の隣に『14』って書いてある。
「――って、これって出席番号だよな?」
「うん、そうだね」
「なんで俺の後ろが水麗なんだ? うちの学校、男子のあとに女子が来るんじゃないのか? 去年そうだったし」
「あーとね、今年から男女混合にしたみたい」
へー、そうなんだ。
知らなかった。
なんで水麗知ってるの?
「……すごいね、みんな一緒だよ」
紙を見ながらつぶやく水麗。
みんな……?
俺は上から見てみる。
『霧宮白斗』、『新坂皆嘉』、『風崎大雅』、『室井美月』、『桃山冬乃』……。
本当にみんな一緒だ……。
「3階だって、行こ?」
水麗がやっと俺に顔を向ける。
微笑んでる。
「……そうだな」
俺は水麗と一緒に校舎に入った。
3階に着いた。
階段が多い。
1組に行くと、黒板に座席表が貼ってあった。
「あ、私見てくるよ。お兄ちゃんはここで待ってて」
「いや、俺も行く」
「なんで?」
「お前に席騙されるからだ。もうあんな目立ちたくない」
「……よく気づいたね。ってか、もうお兄ちゃん目立ってるよ? 体育祭でかなり有名人になってるし」
体育祭?
なんか体育祭でしたっけ?
「『ドッジボールもどき』やったじゃん。あれでかなり目立ってた」
ああ、あの意味不明な競技か。
まぁ、4人しか出ないからそりゃ目立つわな。
俺の席は水麗の前。
これも出席番号順。
「おお、ここか」
入口から声がする。
リュックを机の上に置いてからその方向を見る。
美月がいた。
でも雰囲気がなんか違う。
なんかオーラを感じる。
「久しぶりだな、康輝」
美月は俺の席のところまで来る。
「ああ、久しぶり」
「まさか皆同じクラスとはな。これじゃ体育祭、圧勝するぞ」
「そうだな」
俺は美月の顔をちゃんと見る。
目の下にクマができてる。
寝不足か……?
「なぁ、お前ちゃんと寝てるか?」
「え?」
「目の下、クマあるぞ?」
「……ちょっとやりたいことが多くて……」
急に地声出す美月。
ここでその声出していいのか……?
確かにこの教室の中には俺と水麗くらいしかいないけど……。
「ま、心配してくれてありがと。これからもよろしくね」
美月はそう言って、自分の席を確認しに行く。
水麗は地声を出した美月をガン見してる。
この1年、どうなるかな……?
「みんな一緒か……。なんか大変なことになりそうだな……。ではクイズだ! 『1年生のとき、1組じゃなかったのは康輝、水麗、大雅、美月、皆嘉、白斗、冬乃のうち誰?』。複数あるぞ」




