第170話 芽依の墓
「前回のクイズの答えは『バーベキュー』だ」
すでに墓石は掃除されてるらしい。
多分、俺が来る前に芽依の両親が来て掃除したんだろう。
線香がすでに供えてあった。
俺はリュックから数本の線香を出して、ポケットからライターを出す。
そして線香に火をつけてから、それを香炉に置く。
「……芽依、久しぶり」
墓に向かって喋る俺。
「俺、無事に高校に行けた。結構大変だよ。……あと、これ」
俺はさっき買った大福を置く。
「そっちはどうだ?」
もちろん、俺が質問してもなにも起こらない。
芽依は自殺した。
首を吊った。
俺はポケットから手紙を出す。
芽依が、自殺する前に俺に渡してくれたものだ。
『康輝、ごめんね。これしか方法が思いつかなくて。私はこのあと、自殺するね。康輝に、自殺なんてダメ、って言ってたのにこんなことしてごめん。なんで自殺したかってのを話さなきゃいけないね。これはね、私のためなんだよ。ちょっと昔のこと書くね。康輝、突然いじめられたよね。理由は私もわからない。
私はね、初めて会ったときから結構康輝のこと気になってたんだ。だから私は康輝の味方になった。結果、私が康輝のことをかばいすぎて康輝はもっといじめられた。学校も行かなくなったよね。そのせいで康輝の人生が色々と狂った。
そのまま卒業しちゃったよね。
私さ、どうしても許せなかったんだ。康輝をいじめた人。ま、学校の人全員なんだけどね。生徒はもちろん、先生も全然行動してくれなかった。だから痛い目をみてもらいたかったの。学校に死体があったらどんな反応するか、ちょっと楽しみだよ。
自分のせいで人が死んだ、って怖がらせたかった。一生びくびくしながら生きさせてやりたかった。
……ま、康輝がこれ読んでるってことは、もう多分、私は生きてないけど。
康輝、ありがとう。康輝と一緒にいれて楽しかったよ。
そして康輝は絶対生きて。
なにがあっても、生きててほしい。
どんなに絶望しても、生きて。
できれば私のこと、忘れてほしいな。
だって、私のこと覚えてると、康輝がいじめられてた嫌な思い出も覚えることになるでしょ?
この紙も燃やしていいから。じゃ、バイバイ』
「……忘れられるかよ……」
目が熱くなる。
そして熱い液体が目からあふれる。
俺はしばらく声をおさえながら泣いた。
なんで芽依が死んだのかわからない。
死ぬべきなのは俺なのに。
いや、本当に死ぬべきなのはあいつらだ。
俺をいじめたやつだ。
俺はその紙をポケットに入れて、さっき置いた大福を持って墓地から出た。
「なんか雰囲気を壊して申し訳ないけど、『なんでだよ』ってツッコミどころあったよね……? 例えば、お墓参りの手順違ったり。作者はあんまりお墓参りのこと知らないから、そのへんは見逃して……。……ではクイズだ! 『夏休みに行った遊園地、ジェットコースターに乗って気分が悪くなったのは誰?』。お墓参りの手順は本当に見逃して!」




