第169話 修了式
「前回のクイズの答えは『美月、大雅』だ!」
今日は3月23日――修了式だった。
なんか校長の長い話聞かされた。
相変わらず校長の髪型がバーコードだったから、そっちに目がいって話に集中できなかったけど。
そして成績表も返された。
水麗と大雅が絶望してた。
ま、それはどうでもいい。
これでやっと1年生が終わった。
今度から2年生。
そして、前崎先生ともわかれるのか……。
結構世話になったもんな……。
礼を言いたかったけど、なんか前崎どっかに行っちゃった。
「お兄ちゃん……、お母さんって成績とか気にするかな……? 成績悪かったら怒るかな……?」
訊いてくる水麗。
成績、悪かったんだな。
「いや、母さんは怒んないと思うぞ?」
「よかった……」
「ま、自分が反省してたら、の場合だけどな」
「は、反省してる! 次は絶対いい点数とるし、勉強もする!」
「俺に言われてもな……。ま、頑張ろうぜ、一緒に」
俺はリュックを背負って、教室から出ようとする。
「あ、待ってよ! 一緒に帰ろ!」
「いや……、今日は……3月23日は……、独りで帰りたい……。寄りたいところがあるんだ」
俺がそう言うと、水麗はなにかを察したようで、それ以上はなにも言ってこなかった。
俺は独りで、家とは真反対の方向に行った。
途中に和菓子屋があったから、俺はその店に入った。
そしてそこで大福を一つ買った。
なにも思わないで歩き続ける。
いや、昔のことを思い出していた。
「――康輝、私ね、『ケーキ屋継げ』って言われちゃった」
公園のブランコに乗りながら俺に言ってきたのは芽依。
俺も芽依の隣のブランコに乗ってる。
「ああ、いいじゃねぇか」
「いや、康輝はどっちがいいのかなって」
「なんで俺?」
「康輝に似合わないじゃん、ケーキ屋なんて」
「だからなんで俺?」
「お父さんとお母さんも『康輝くんには似合わない』って言ってたし」
「俺の声聞こえてる?」
芽依はブランコから降りる。
そして自分の首を触った。
「康輝――私さ――」
――気づいたら目的地に着いてた。
驚くらい静かだ。
……ま、当たり前か。
俺はその敷地の中に入って、奥に進む。
結構奥の方に、俺が求めてるものがある。
結構最近建てられたものだ。
俺はその場に到着すると、前にあるものを見つめる。
それは、『榎本芽依』と刻まれた墓石だった。
「康輝……。じゃあ……、クイズ……。『夏祭りとバーベキュー、先に行ったのはどっち?』。……」




