第168話 夜8時
「前回のクイズの答えは『榎本』だ」
夜8時。
ちょうど今夕食食べ終わった。
普通に美味かった。
いつも通り父さんと母さんはいない。
ちゃんと労働基準法に従ってるかな……?
問題はタイミングだな。
いつケーキ出そう……。
奇跡的に、水麗はまだ冷蔵庫の中にあるケーキに気づいていない。
「よし、皿洗いしますか」
水麗が椅子から立ち上がる。
今しかないな……。
「水麗、ちょっと待って」
「? どうした?」
「いや、座っててくれ」
「? なんで?」
「ちょっと伝えたいことがある」
俺が言うと、水麗は深刻そうな顔をして椅子に座った。
深刻な話かと思ってるのかな……?
ま、いいや。
俺は冷蔵庫を開けて、白い箱を出す。
中にチョコレートケーキがある。
俺は箱を水麗の前に置く。
「なにこれ?」
「中、開けてみろ」
水麗は不思議そうな顔をして箱を開ける。
中にあるケーキを発見した水麗。
急いでケーキを出してる。
「なにこれ!?」
「ケーキだ」
「なんで!?」
「今日何日だ?」
「2月26日……」
「誰かの誕生日だろ?」
「えっと……。……。……! 私の誕生日じゃん!」
マジで忘れてたんだ……。
「お兄ちゃん覚えててくれたんだ! 私も忘れてたのに!」
「家族の誕生日くらい覚えてる」
「……お母さんの誕生は?」
「それは知らん」
「だよねー……。お兄ちゃん、お父さんの誕生日のときはなんか手紙渡してたけど、お母さんのときはそんなことしてなかったもん」
だって母さんの誕生日知らないし。
本音言うと興味ないし。
「これお兄ちゃんが買ってきてくれたの?」
「ああ、めっちゃ美味いぞ」
「このへんのケーキ屋さんじゃないね。どこ?」
「結構遠くのとこ。俺もそこのケーキ好きだから買いに行ったよ」
「へー……、ありがとう……。今度私も行っていい? 連れてってほしいな」
それは無理だな。
芽依のお父さんが絶対許してくれない。
また『なんで来たんだよ!』って言われる。
「早速食べていい?」
「どうぞ」
「じゃ、包丁持ってくる」
水麗が立とうとするけど、俺がそれを止める。
そして俺は包丁を持ってきた。
「お兄ちゃんが切るの?」
「ああ、これでもケーキ切るのは上手いんだぞ?」
ケーキだけだけど。
早速ケーキを切った。
うん、上手くいけた。
それを皿に盛り付けて、水麗の前に出す。
水麗はゆっくりケーキを食べ始める。
その間に俺は自分の部屋まで行って、水麗にあげるプレゼントを持ってきた。
水麗がすんごい勢いでケーキ食べてる……。
結構気に入ったのかな?
「水麗、これ」
俺は水麗に緑色のワンピースを差し出す。
「誕生日、おめでとな」
「これワンピース!? 高かったでしょ!?」
「全然大丈夫だ」
「……これ一人でお店行って買ったの?」
「ああ」
「……ありがとう。買いにくかったよね……?」
「女性用水着買うより全然楽だ」
「買ったことあるんだ……、女性用下着……」
うん、ある。
ま、水麗も喜んでそうだしよかった。
「おお! 水麗にワンピースをあげたのか! よいな! ……って、この季節にワンピース……? ま、まぁいいか……。我も呼んでくれればよかったのに……。ではクイズだ! 『康輝の誕生日の日に、康輝の家族以外で康輝の家にいたのは?』。これは覚えてるよな?」




