第164話 いい考えない? 〜大雅〜
「前回のクイズの答えは『7月3日』だ!」
地下1階まで行ってみた。
そこになんか古い部屋がある。
ここかな……?
俺はその部屋のドアをノックする。
すると『入ってきてどーぞー』って声がする。
大雅の声だ。
俺はそのドアを開ける。
中にはスマホをいじってる大雅がいた。
「? どうした? ……あ、俺と喧嘩しにきたのか?」
「んなわけねぇよ。あのさ、ちょっと訊きたいことがあるんだけど……」
「なんだ?」
「水麗さ、今日誕生日なんだ」
俺が言うと大雅はスマホを近くにある机に置く。
「へー、すげぇな」
「それでさ、なんかしてやりてぇんだけど……」
「……! 喧嘩なんてどうだ? あいつに喧嘩の楽しさを教えてやるんだ」
「却下」
「でもそれしか思いつかねぇぞ?」
うん、こいつに訊いた俺がバカだった。
大雅に訊いたら『喧嘩』しか出てこないことなんて考えればわかってたのに……。
最近大雅と喧嘩してねぇから忘れてたわ……。
「あいつ、康輝の出すものならなんでも喜ぶんじゃね?」
美月と同じこと言ってる……。
「いや、もっとなんか……、別のやつねぇか? 本当に心から喜ばせたいんだ」
「確かに、あいつは大切なやつだからな……」
「……なんか真剣に考えてるところ変なこと言って悪い。お前と水麗ってそんなに仲よかったっけ?」
「康輝が『考えろ』って言ったから考えてるんだろ?」
「そうだけど、なんかお前にしてはちゃんと考えてそうだったから……」
「……あいつは大切なやつだ」
あれ?
大雅の声のトーンが変わった。
本当に大雅と水麗ってそんな仲だったっけ?
「そんなに大切なやつなのか?」
「ああ、めっちゃ大切なやつ。なにしてくれたと思う?」
いや、そんなのわかんねぇよ。
大雅のことだからどうせ喧嘩とかそんなやつだと思うけど、水麗がそんなことするとは思えない。
本当になんなんだ……?
「俺に言ってくれたんだ。『赤点は大雅だけじゃないよ』って」
……は?
「俺だけ赤点だと思ったんだよ! 中間テスト! だけどな、あいつも赤点だったんだ!」
……はい、そうですか。
「だからあいつは大切なやつだ」
「いや、お前と水麗以外にも赤点のやつはいると思うぞ?」
「いや、多分いない」
「そんなこと――ってか、今は赤点なんていいんだ。水麗の誕生日――」
「俺は思いつかない、喧嘩しか」
俺の声を遮る大雅。
「冬乃のやつにきけばいいんじゃねぇか?」
「……わかった、ありがとう。ってか、お前はここでなにしてるんだよ?」
「独りになりたかった」
ええ……。
「……なんか邪魔して悪かった。でも本当にありがとな」
俺はそう言ってその部屋から出た。
大雅ってあんなキャラだったっけ?
「大雅……なぜ独りでいるのだ……! 疲れているのか……? ではクイズだ! 『康輝の誕生日と水麗の父の誕生日、どちらが先にある?』。これは覚えてるだろー!」




