第158話 大晦日
「前回のクイズの答えは『イケメンのお兄ちゃんだ〜』だ! 我も康輝を兄にしたい……」
大晦日。
今日は珍しく母さんと父さんが家にいる。
久しぶりに家族全員で集まって食事もした。
たった今、年越しそばを食い終わったところ。
だから今はもう夜。
朝、昼は特に変わったことは起こらなかった。
8時になった。
父さんと母さんはもう寝るらしい。
リビングには俺と水麗だけになった。
「おそばどうだった? 初めてつくったからあんまり自身はなかったけど……」
「結構美味かったぞ? しかも、自分でつくったのか?」
「うん」
すげぇな。
流石水麗。
「お母さんももう寝ちゃったのか……。もっと話したかったのにな」
「確かに、お前と母さんが話す機会なんてあんまないもんな」
「うん……。寝るまでなにしょっかな?」
「テレビでも観たらどうだ?」
「お兄ちゃんも観る?」
「いや、俺はいい」
「じゃ、私もいい」
あ、観ないんだ。
大晦日だから結構面白い番組やってるはずなんだけどな……。
俺はテレビとかあんまり興味ないから観ないけど。
「――お兄ちゃんってさ、将棋部だよね?」
水麗が唐突に言う。
俺は思わず水麗を凝視してしまった。
水麗はつくり笑いのような表情をつくっている。
「あのさ、盤と駒はあるから……、やらない?」
水麗……。
将棋、やっていいのか……?
お前の本当の母さんとの思い出、頭の中にまた出てくるぞ……?
そんなことを思ってたから、俺は何も言えなかった。
「――そうだな……。やろう」
やっと出た言葉はそれだった。
水麗は何回かうなずくと、階段をあがっていった。
俺もついていくと、水麗は自分の部屋に入っていった。
「入って」
中から水麗の声。
俺は深呼吸をしてから水麗の部屋に入る。
水麗の部屋は結構整理整頓されていた。
普通に綺麗。
水麗はどこからか将棋盤と箱を持ってきて、それを部屋の中央に置いた。
箱の中には駒が入ってる。
「じゃ、並べよっか」
水麗は慣れた手つきで駒を並べはじめる。
俺も床に座って、駒を並べ始めた。
――負けた……?
水麗の龍王が俺の玉将のすぐ横にある。
そしてその近くには水麗の桂馬、他にも金将がある。
唯一逃げれそうなところには、水麗の角行がきいてる。
「……参りました」
俺は頭を少し下げて言った。
意外なことに、結構俺は驚いてる。
これでも将棋の腕には自身があったほうだ。
部活でも、先輩に褒められるほどだ。
手加減したつもりはない。
「ありがとう。久しぶりにやって楽しかった。お兄ちゃん、結構強いんだね」
「あ、ああ……」
何を言えばいいかわからない。
「なんか最近の話、恋愛要素がないな。結構重い話が多い……。そして! 水麗の過去がどんどんでてきてるから、そのうち我の過去もでてくるかもな! ではクイズだ! 『将棋部の合計部員数は?』。昔これと似た問題を出したことある気がする……」




