第146話 美月の出し物
「前回のクイズの答えは『③』だ!」
床に座った俺たち。
床は掃除されてるみたいで、結構綺麗。
「十五分間、ここにいれるよ」
美月は相変わらずの高い声で言う。
「で、ここで何をするんだ?」
「主に雑談。頼めば膝枕もできるよ?」
本当になにしてんだよ。
高校生が、しかも文化祭でこういうのしていいのか?
先生とか親からクレーム来ない?
「なんか私が休んでるときに決まっちゃった。誰がこんなの企画したんだろうね」
本当だよ。
逆に女子生徒たちもよくこれを許したな。
一人くらい『そんなの嫌だ!』って言う女子生徒もいただろ……。
あと男子生徒はどうなった?
この教室にいるの、だいたい女子生徒だぞ?
男共は遊んでるだけなのか?
「康輝はどうする? 膝枕する?」
「いや、いいよ。ただお前に会いに来ただけだから」
「あっ、私に会いに来てくれたんだ。ありがと」
「お前も俺たちのクラスの出し物来てくれたからな」
「それより、本当に膝枕しなくていいの? ここでしか体験できないよ?」
逆に膝枕してほしいのか?
美月ってこんなキャラだったっけ?
「本当に大丈夫。水麗に見られたらなんか言われそうだし」
「『欲に従って何が悪い』って言えば大丈夫だよ」
いやいや、絶対大丈夫じゃないでしょ。
しかも、ここ人多いし。
色々な人に見られたくないし。
「恥ずかしがらないで、おいで? ……あ、もしかして思春期か。女の子の身体で興奮しちゃう?」
なんだ、このムカつく言い方。
……そういえば美月、メスガキだったらしいな……。
これじゃストーカーされて当たり前だ。
「お前も色々と大変だな」
「? 急にどうした?」
「今度ジュースでも買ってやるよ」
「だから、急にどうした?」
「なんかあったら相談しろよ?」
「……おーい、私の声、聞こえてる?」
美月が俺の顔を見つめる。
あとこいつも、ここで地声出していいのか?
地声隠してるんじゃなかったの?
「時間もあれだし、雑談でもしよっか。何について話す?」
「そうだな……、また生物クイズでもやるか?」
「! うん! やるやる!」
やっぱ生物には弱いんだな、こいつ。
確かに生物は面白いけど。
「またあのときみたいにお互いクイズ出す!? だったら私から出したい!」
……珍しいな……。
こんなに興奮してる美月、あんまり見たことない気がする。
あと、ここ終わったらどこ行こう……。
……冬乃のとこに行くか。
「康輝……、興奮するかと思ったのに……。じゃあクイズ。『入学式は、康輝と水麗が出会ってから何日目?』。本当にだいぶ前だな……」




