第138話 お化け屋敷のネタを
「前回のクイズの答えは『キャバ嬢の名刺』だ! 高校生になんてものを……」
「で、どんな感じにする?」
俺の部屋でノートを広げる水麗。
今は午後八時。
委員長に言われた通り、なんか色々しなきゃいけない。
「『どんな感じ』って……。俺は全然思いつかないぞ?」
「まずは場面を考えなきゃね。廃病院とか、学校とか。神社とかもいいんじゃない? 村全体が幽霊であふれてるっていうのもありだよね」
「よくそんな思いつくな」
「こういうの好きだから」
こいつ、こういうの好きだったのか……。
水麗の意外な一面を知れた。
でもそんな驚いてない。
最近驚きすぎて、このくらいじゃ驚かなくなった。
やっぱ一番驚いたのは美月の声優の話だな。
アイツ、どうすることにしたんだろう……。
「――どれがいいと思う?」
水麗が訊いてくる。
ヤバイ、全然聞いてなかった。
「ごめん、もう一回言って」
「『場面はどれがいい?』って聞いたんだけど……」
「あ、場面か……」
水麗のノートには色々書かれてる。
『廃病院』とか『工場』とか。
「せっかくだからマジで怖いのがいいよな」
「じゃあ廃病院でいいんじゃない?」
「そうだな。……ってか、お前ホラー苦手なんだろ? よくこんなん考えられるな」
「めっちゃ我慢してるよ」
あ、我慢してるんだ。
でも水麗なら『ヤダ! 怖い!』とか言いそうだけどな……。
「それに一回やってみたかったんだ。お化け役」
「そ、そうなんだ……」
「いっつも私ってお化け屋敷とかで怖がってるじゃん? だから今度は怖がらせたいんだよね」
水麗の顔が変わってくる。
『笑い』が『嗤い』になってきてる。
冗談抜きで結構怖い。
「み、水麗……?」
「! ヤバイ……。考え事してた……」
「あ、ああ……。結構怖かったぞ?」
「まぁ、そんなときもある! うん! じゃあ次! ストーリー!」
そんなときもあるんだ。
「ストーリー、私考えたんだけどそれでいい?」
「ああ、特に思いつかないし。どんなストーリーにしたんだ?」
「昔、『そこに入院した患者は必ず死ぬ』って噂がある病院があったの。もちろんそれら噂だから本当じゃない。でもそれを信じた人たちはその病院に通うのをやめたの。そのせいで病院は儲からなくなって、最終的に倒産。それで院長はお金がなくなって、家族で心中したの」
うん、よく思いついたな、こんなの。
今の一瞬で思いついたの?
これはもう才能だ。
「それで、その病院には院長の家族の幽霊がうろついてるの」
「よく思いついたな」
「得意から。これで終わったね」
「お前のおかげで一瞬で終わった。ありがとな」
「うん、細かいところは私がやっとくね」
水麗はノートを閉じ、俺の部屋から出ていった。
五分もかからなかったな……。
「水麗、よくこんなもの思いつくな。ホラーが苦手だと思っていたが……。ではクイズだ! 『第23話のタイトルは?』。……これくらいしか思いつかない……」




