第136話 昨日どこ散歩してた?
「前回のクイズの答えは『サングラスとマスク』だ!」
「昨日何してたの?」
翌日、登校中に水麗が訊いてきた。
俺と水麗以外には人がいない。
「昨日?」
「昨日の夜だよ。出ていったじゃん」
「ああ……」
美月が声優になるかもってやつか。
美月のためにも、あんまり人に広めないほうがいいな。
「普通に散歩だよ」
「どこ散歩してたの?」
そんな詳しく訊く?
怖いよ?
「学校の周り」
「なんで?」
「暗くなった学校見たかった」
……何言ってんだ、俺。
『暗くなった学校見たい』って言い訳……。
「あそこ、夜は危ないよ? 街灯も少ないし、結構車通り多いし、道狭いし。しかもあの時間、お兄ちゃんが寝る時間に近かったし、眠かったでしょ? ふらふらして事故にあっちゃうかもしれないから、あんまり通らないほうがいいよ……?」
うん、普通に優しい妹だった。
そんな心配してくれるキャラだっけ?
「わかった、ありがとな」
「うん、学園祭も近いんだから怪我とかしないでね」
……本当にこいつ水麗か?
そろそろマジで疑えてくるんだけど。
ドッペルゲンガー?
「あ、あれ冬乃ちゃんじゃない?」
考え事をしていたら水麗が前を見て言い出す。
確かに冬乃の背中らしきものが見える。
「冬乃ちゃん!」
「あ、水麗ちゃん……」
冬乃は振り返る。
目の下にめっちゃクマがある。
「冬乃ちゃん!? 目の下すごいよ!?」
「う、うん……。ちょっと寝れてなくて……」
「そういえば昨日、『家に帰ってくんな』って言われてたよな? 母さんに」
「そうなんだよ……。それで公園で時間潰してたんだけどね。ベンチに座ってお昼寝してたら、気づいたら夜になってたんだよね。宿題も勉強もあったし、寝ないでやってたんだよ」
……寝不足か……?
公園で寝たんだろ?
寝る時間は変わらない気がする。
いや、夜に寝ないと意味ないのかな?
「でもそんなに多かったの? 宿題」
「いや、そんな多くなかったんだけどね。最近料理も研究してるんだよね。新しいメニューとか考えなきゃいけないんだよ」
冬乃も大変なのか。
ってか、冬乃も考えてるんだ、新しいメニュー。
冬乃も料理得意のかな?
一回食べてみたいな、冬乃のつくったやつ。
「康輝くんも大変だった?」
? なんで俺?
「顔に書いてあるよ? ケプラーの法則を理解し終わった私と同じ顔してるよ」
? ケプラー……?
なにそれ?
法則?
……いや、なんか聞いたことあるかも。
天文学者だっけ?
しかも冬乃、『理解した』って言った?
なんでそんなこと理解できるの?
「早く行こ。遅刻しちゃう」
冬乃は相変わらず笑みを浮かべたまま歩き出した。
「ケプラー……、なんか聞いたことある人物だな。ではクイズだ! 『体育祭のときの、借り物競走、大雅のお題は?』。今度は大雅か……」




