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第134話 美月に呼ばれた

「前回のクイズの答えは『佐藤』だ! いや、誰だよ!」

 「ちょっと散歩行ってくる」


 リビングにいる母さん、父さん、水麗に言って俺は玄関に向かう。


 「? 康輝、どうしたの? こんな時間に」


 母さんが訊いてくる。

 水麗や父さんも不思議そうな顔をしている。


 「だから散歩だって」

 「こんな時間に?」


 ちなみに今は九時。

 ……あ、もちろん午後九時だよ?


 あと一時間で俺の寝る時間だ。


 「ああ、ちょっと夜に散歩したくて」

 「えー、じゃあ私も行く」

 「お前は宿題があるだろ? 勉強もだいぶ難しくなってきてるから、復習くらいしとけよ?」

 「んー……、わかったよ……」


 よし、これで俺は一人で行ける。


 俺には一人で行きたい理由があった。


 少し前、美月からメールが来た。

 『九時半に駅に来れる?』って。


 どうしても二人きりで話したかったみたいで、『一人で来てね?』とも送られてきた。







 「――康輝!」


 駅の前で待ってたら、前から美月が走ってきた。


 「ごめん! ……待った……?」

 「いや、全然。そもそもまだ九時半になってねぇし」


 今の美月は地声を出している。

 そして人通りがなぜか少ない。


 いつもはもっと混んでるよな……?


 「康輝……、急に呼び出してごめんね」

 「俺は大丈夫だ。で、話したいことってなんだ?」

 「……呼び出しといてあれだけど、ここで話すのもなんか目立っちゃうからあそこで話そ?」


 美月はすぐ近くにあるカフェを指差す。


 「コーヒーでも飲みながらさ。私がお金払うから」

 「そんな貧乏じゃねぇよ、今は」


 てか、そもそもこの時間にカフェなんて開いてるんだ。

 初めて知ったわ。


 そして俺たちはそのカフェに入った。


 「そういえば康輝と二人でこういうお店入るの、初めてだね」


 席に座ってコーヒーを頼んでから美月が言ってきた。

 店の中は結構空いてる。


 「ああ、二人は初めてだな。てか、お前の方は時間大丈夫なのか? 親とか心配してねぇか?」

 「親には……」


 美月は人差し指を口の前に近づける。

 ……って――


 「お前……親に出ていくって言えよ。一回ストーカーされたんだろ?」

 「だからだよ。あれから夜遅くの外出禁止されちゃったもん。友達と遊びに行くのも減らされちゃったし。夏祭りだってお父さんがついてきてたし」

 「? お前の父さん、いたのか?」

 「影でずっとついてきてたんだって。その割には私がナンパされたとき助けてくれなかったよね」


 声のトーンを下げて言う美月。

 さっきからずっと机の端を見ている。


 「私のためっていうことはわかってるんだけどね。わかってるんだけど……、もうちょっとプライバシーっていうか……、好きにさせてほしいな……」


 泣きそうになる美月。


 「……! ごめん! 関係ないこと言った!」

 「お前も大変なんだな」

 「うん……、それで、話なんだけど……」


 美月は大きく息を吸い、覚悟を決めたような顔をする。


 「私――」


 「――声優になるかも」

「なんかすごいところで終わったな……。それにしても、もう少し友達と遊ばせてほしいな……。ではクイズだ! 『ショッピングモールでスゴ技をすれば何をもらえた?』。我もほしいな……」

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