第130話 Riraさんの正体
「前回のクイズの答えは『生命保険』だ!」
「あ、優勝おめでとうございます!」
突然『Rira』さんが言う。
優勝って……、体育祭だよな……。
なんで知ってんだ?
俺の顔を見て、『Rira』さんはニッコリしたままポケットからスマホを出して、俺に見せるようにする。
「学校のホームページに書いてありました!」
うちの学校、ホームページなんてあるんだ。
意外とやるじゃん。
「それより、よくわかりましたね」
『Rira』さんはスマホをポケットにしまい、さり気なく言う。
「知ってたんですか? 『私が女優』ってこと」
「確信はなかったんですけどね。昨日、『撮影』とか言ってましたし、顔の隠し方が完全に有名人って感じでしたもん」
「バレないようにしてたんですけどね……。康輝さんには無意味でしたか……」
『Rira』さんは軽くため息をついて、さっきとは違う笑みを浮かべる。
ってか、女優だったんだ。
テレビとかニュースとかあんま観ないからわかんなかった。
「お待たせ、お兄ちゃん」
水麗が少し低いテンションで俺に話しかける。
『Rira』さんを警戒してるみたいだ。
「あ、彼女さんですか?」
「いや、妹で――」
「あ! 『石川ひなた』!」
俺の声を遮って水麗が急に大声を出す。
『Rira』さんは水麗の口を急いで手でおさえる。
「あ、あの! それは……」
『Rira』さんは片手の人差し指を自分の口に近づける。
『シーッ』のやつ。
「あ、ごめんなさい」
水麗は『Rira』さんから少し離れる。
ってか水麗、『石川ひなた』って言った……?
「……まさかお兄ちゃん、知らないの?」
水麗が俺の顔を覗いて言う。
その言い振りからすると、知らない方がおかしいのかな?
「ああ、知らん」
「超有名女優だよ。高校生の」
『石川ひなた』か……。
そういえば体育祭のとき、スマホから『ヒナタちゃん!』って呼ばれてた気がする。
じゃあ『Rira』はなんなんだ……。
「『超有名』ってわけじゃないですけど……。康輝さんたちもここで食べてたんですか?」
『Rira』――『ひなたさん』って言った方がいいのかな?
その人が冬乃のラーメン屋を指で差す。
その言い方からすると、ひなたさんも食べたのかな?
ここのラーメン。
「まぁ……」
「美味しいですよね、ここのラーメン」
ひなたさんもラーメン好きなのか。
しかも冬乃のところの。
「……あ、すみません、時間で……。さよなら!」
ひなたさんはマスクとサングラスをして走って去っていった。
女優も大変なんだろうな……。
「おお! 康輝がナンパした女、女優だったのか! ……今は顔を隠しているが、なぜショッピングモールでは隠さなかったのか……。ではクイズだ! 『美月と康輝がメールをつないだのはいつ? ①会ってから二日目 ②中間考査のすぐあと ③遊園地』。どれだと思う? それと、一週間くらいは投稿ができないかもしれぬ。本当にすまぬ」




