第129話 冬乃のところのラーメン
「前回のクイズの答えは『焼きそば』だ! ……バーベキューのときか……」
「お、お待たせしました」
冬乃が担々麺と野菜ラーメンを持ってくる。
一番驚いたのは料理より、冬乃の力。
それぞれ片手で持ってる。
結構器とか大きくて重そうなのに、片手で軽々と持っている。
……『軽々と』ではないな。
「あ、ありがとう、冬乃ちゃん」
「ではお会計の際に伝票をお願いします」
冬乃はラーメンをテーブルに置いて、伝票も置く。
そしてさっさとどっかに行った。
「大変だね、冬乃ちゃんも」
「お前も頑張ってるけどな」
俺は割り箸を割り、ラーメンのスープを飲む。
うん、美味い。
「? 私?」
「ああ。……それと食いながら話そうぜ?」
「うん」
水麗も割り箸を割ってスープを飲み始める。
「――で、さっきの話なんだけど……」
「水麗も頑張ってる。そう言いたかった」
「まぁ、嬉しいけど……。私なんかより、もっと頑張ってる人いると思うよ? お兄ちゃんとか」
「俺はあんま頑張ってねぇよ。ただ言われた通りに生きてるだけ」
「…………」
水麗は黙ってラーメンを食う。
また変な会話になってしまった……。
「――ごちそうさま」
ラーメンを食い終わった俺たちは立ち上がる。
「あ、私にお会計させて。冬乃ちゃんに話したいことがあるから」
「わかった、じゃ、これ」
俺は金を水麗に渡し、外に出ようとする。
ここにいても邪魔だからな。
「なぁ? 一人なんだろ?」
外に出た瞬間、中年の男の声が聞こえる。
その方向を見ると、二人の中年の男が一人の女の人を囲っていた。
……『囲っていた』っていうのかな……?
まぁ、なんか女の人の前にいた。
「や、やめてください……」
その誰かが言ってる。
ってか、あの人……。
「え? そんなこと言うの? 大声で言っちゃうよ? 『ここにいる』って」
「それは……個人情報にも関するので……」
「じゃあおいでよ。大丈夫だよ、ご飯一緒に食べるだけだから」
「ですから……」
俺はゆっくりとその人たちに近づく。
でもその人たちは俺の存在に気づかない。
ナンパしてるのかな?
なんて言おう……。
「てか、私服、それなんだね。かわいいね」
「え、あ……」
「あ、いたいた!」
俺はわざとそんなことを言い、ナンパされてる女の人の手を掴む。
女の人はめっちゃ驚いてる。
「あ? なんだ兄ちゃん」
男は俺を睨む。
うわ、変な顔。
「俺? ちょっと関係者なんだよな」
「は? 意味わかんねぇんだけど?」
「『関係者』って意味、わかんねぇか?」
「なめてんのか?」
めんどくせぇな……。
殴り合いしてもいいけど、この人――『Rira』さんの前だもんな……。
そう、ナンパされてたのは『Rira』さん。
マスクとサングラスと帽子を被ってる。
……これは予想だけど、賭けてみるか……。
「あれれ? 逆にそんなこと言っていいんですか? 事務所に言えばすぐ訴えることできますよ?」
その言葉で男たちは黙る。
そしてなんかブツブツ言いながらどっか行った。
「あ、ありがとうございます!」
俺の後ろで『Rira』さんが言う。
振り向くと、マスクとサングラスを外して笑っている『Rira』さんがいた。
「なんか、どこにでもいるな、『Rira』さん。……ま、いっか。ではクイズだ! 『康輝の父親はなんのために自殺した?』。……重い問題だな……」




