第122話 赤団、優勝
「前回のクイズの答えは『塩ラーメン』だ! どこに答えが書いてあるかわかるか?」
「いやー、キミたち強すぎでしょ」
『ドッジボールもどき』が終わったあと。
一旦生徒は自分の席に戻れって指示があった。
そのときに石本先輩が話しかけてきた。
「まさか俺に当てるなんて。あんな作戦、よく成功したね」
「ってか、皆嘉もよく靴でボールの軌道を変えられたな」
「ああ、まぁ……、半分の確率だったけどな」
「いつ思いついたんだよ……」
「それはな――」
皆嘉は白斗を目の端で見る。
白斗はメガネのレンズをハンカチで拭いている。
「白斗が作戦を考えるときがあっただろ? そのときに俺にだけ教えてくれたんだ。『敢えて当たって、外野からボールを当てよう』って」
「……それで、『靴投げてボールの軌道を変える』って思いついたのか……」
「俺が成功する可能性も高くはなかったから、念のため白斗も外野に行ってもらった。俺が失敗したら白斗にやってもらう予定だった」
……よくそんなこと思いついたな……。
意外と喧嘩強そうだな、白斗って。
「――てか、急がなくていいの? キミ、放送係でしょ?」
石本先輩が俺の胸の中央に拳を当てる。
「キミが直接優勝トロフィーを貰うところは見れないけど、言わせてもらうよ」
「――優勝おめでとう」
「すごい! すごかったよ!」
本部に戻った瞬間、冬乃が俺に抱きついてくる。
でも焦りはしない。
もう水麗に抱かれすぎて、もう慣れた。
慣れちゃいけないことだと思うけど。
「本当にお主等はおかしいな……。それに大雅……、あやつ、腕を怪我しているはずだが……」
「あいつはもうどうしようもない」
「それにしてもすごかったよ! 最後なんて、白斗以外のみんなが協力して相手を倒して!」
おい、冬乃。
『以外』は余計だろ……。
白斗が泣くぞ――いや、あいつは泣かないか。
「よくやったぞ! 康輝!」
声が聞こえると同時に、誰かが後ろから俺の頭を掴む。
声的に前崎先生だ。
「まさか本当に優勝できるとはな! 流石は俺の生徒だ!」
「ありがとうございます……」
「変わらねぇな、お前は!」
……?
変わらねぇ……?
『入学したときの俺と変わらない』って意味かな……?
どういう意味なんだろう……。
訊いてみるか。
「あの、先生……。、変わらないって……」
「…………」
黙り込む先生。
なんで黙り込むんだ……?
俺の声、聞こえたのかな……?
「あの、先生――」
「あ、お前ら、早くアリーナに行けよ? 閉会式だ」
先生はそう言ってどこかに行った。
なんかすんごく意味深な言葉にしか聞こえなかったけど……。
結局、赤団の団長が優勝トロフィーをもらって、閉会式が終わった。
「珍しく先生が意味深なことを言ったぞ! ……いや、これが初めてか……? ではクイズだ! 『康輝は作中で一回髪を染めた。何色に染めた?』。これは……簡単か……?」




