第118話 ドッジボールもどきの試合 〜1〜
「前回のクイズの答えは『水麗』だ!」
石本先輩はボールを投げる。
今度は大雅に向かって投げていた。
大雅はそれを躱す。
そして白斗がボールをキャッチする。
一瞬だけ、白斗の目が大きくなった。
「なるほど……確かにこれは少し痛いな……」
白斗はそんな独り言を言い、皆嘉に向かってボールを優しく投げる。
皆嘉は不思議な顔をしながらボールを受け取る。
「ちょっと作戦を考える。僕をまもってくれ」
白斗はそう言って、メガネを外す。
それをポケットに入れて、しゃがみ込んだ。
とりあえず、俺は時間稼ぎをすればいいのか……?
「……お前ら、なんかロープとかあるか?」
「ロープ?」
俺の質問に、大雅が訊きかえす。
確かに唐突に『ロープくれ』って言われても混乱するよな……。
「……何か思いついたのか?」
「ああ、俺にだって思いつくことはある」
ボールを持ったまま皆嘉は、俺の返事を聞く。
そして、ボールを大雅に投げ渡した。
「これならあるぞ?」
皆嘉は上半身の服を脱ぐ。
身体にロープが巻かれていた。
なんで身体にロープが巻かれてんだよ……。
「皆嘉……なんなんだよ……そのロープ……」
「喧嘩に有利になるかなって」
「あ? 喧嘩?」
大雅は『喧嘩』というワードに反応して、ボールを落とす。
そして、そのボールは敵の陣地に転がっていった。
「ラッキー」
石本先輩がそれを掴み、皆嘉に投げる。
皆嘉は俺の顔を見たまま、そのボールを片手でキャッチする。
「待ってろ。今渡す」
皆嘉はボールを俺に渡し、ロープを身体から外す。
結構長い。
「よし、ありがとう」
俺はボールを皆嘉に渡し、ロープをもらった。
そして、俺はそのロープを身体に巻き付ける。
そのロープを結び、数メートルだけ伸ばしたままにした。
……この表情、オッケー……?
語彙力ないから許して……。
数メートルだけロープを結ばないところをつくったってことだよ。
……もうこの説明はいいや。
「おい、皆嘉。これ握っててくれ」
俺は縄を皆嘉に握らせる。
皆嘉は一瞬だけ不思議な顔をしたが、次の瞬間に俺の考えがわかったみたいだ。
「何したいかわかったか?」
「ああ、じゃ、頼んだぞ」
俺は大雅を見る。
大雅も俺の考えがわかったみたいだ。
「……変なこと思いつくじゃねぇかよ」
大雅はしゃがみ、手を組む。
玉入れで、白斗を上にあげたときみたいに。
そう、俺は今からそれをしようとしている。
俺は大雅のところまで走り、大雅の手に乗る。
大雅はそれと同時に俺を高く上げる。
俺は敵陣地の真ん中辺りのところまで跳んだ。
まだ空中にいる。
そこから全力でボールを投げた。
そして俺の足が地面に着く前に、皆嘉がロープを引く。
俺は自分の陣地のところに転がる。
受け身失敗した……。
でも、敵は俺のボールに当たっていた。
ルール説明で、『敵陣地に足を踏み入れるな』しか言われてない。
つまり、足が着かなければいいのだ。
我ながら結構すごいこと思いついたな……。
「康輝……すごいこと思いついたな……。よく試合中にあんなことを……。ではクイズだ! 『バーベキューに行くとき、大雅は康輝にどこの中でメールを送った?』。問題が地味にややこしい……」




