117話 ドッジボールもどき
「前回のクイズの答えは『二十回』だ! 負けすぎだろ……」
「よーい、スタート!」
笛の音が響くと同時に、生徒たちが歓声をあげる。
そして敵側にボールがいった。
今『ドッジボールもどき』の最中。
内野にいるのは俺、大雅、皆嘉、白斗。
外野にいるのは四人の三年生。
赤団が優勝するかは、これにかかってるんだ。
「さてと、早速やりますか」
石本先輩がボールを掴み、俺に投げてくる。
想像の倍以上速い。
俺はギリギリで避ける。
向こうの外野にボールが行った。
外野の無駄に図体がデカイやつがボールをキャッチし、俺に投げてくる。
これも速い。
俺はそれも避ける。
キャッチはあまりしたくないな……。
「……なるほど、今回の敵はさっきまでと同じようにしても効かないってことか」
白斗が涼しい顔をしながら言う。
よくそんな冷静でいられるな……。
でも白斗の言う通りだな……。
……じゃあ、ああすればいいじゃねぇかよ。
俺は皆嘉を見る。
皆嘉は俺に向かって笑っている。
皆嘉もわかってるみたいだな……。
大雅は……?
……わかってなさそうな顔してるな……。
「大雅、どうすればいいかわかるか?」
「あ? わかんねぇよ! とりあえず攻めればいいんだよ!」
「違ぇよ! お前は喧嘩するとき、いつも相手のどこを見てる?」
「あ? そんなの『目』に……」
ここまで言ったところで、大雅はやっとわかったみたいだ。
つまり、この戦いは相手の『目』を見ることが重要だ。
相手は俺たちのスタミナを消費させてきている。
じゃあどうすれば疲れない?
あんまり動かなければいい。
つまり、『相手の目線でボールの位置を予測すればいい』ってこと。
喧嘩するときも、基本相手の目線を見る。
そうすれば、どこをどう攻撃するかわかるからだ。
今回はそのボールバージョン。
全然難しくない。
石本先輩がまた投げてくる。
俺はなるべく動かないようにして、石本先輩のボールを避ける。
すると、ちょうど後ろにいた大雅がそれをキャッチする。
「! 結構痛いな!」
大雅が痛いって言うことはそうとうヤバイのか……。
でもボールはこっちのものだ。
ここから俺らの番だ。
「おい、俺が投げていいんだよな?」
大雅がそう言ってから、石本先輩に投げる。
結構速い。
いや、いつも通りか。
「アハハハ! 弱いボールだなぁ!」
石本先輩は笑いながら大雅野ボールを軽々しくキャッチする。
「それで俺に勝負を挑んだのか! 面白いなぁ!」
なんだあの言い方……。
ムカつくな……。
ちょっとだけ手加減するつもりだったけど、本当にちょっとだけ本気出すか。
全力出しちゃうとヤバイからな。
「とうとう始まったな! ドッジボールもどき! 意外と面白い試合になりそうだ! ではクイズだ! 『バーベキューに行ったとき、焼きそばを食べたいと提案したのは誰?』。引っかかる者、いるかな……?」




