第112話 演劇
「前回のクイズの答えは『奇数』だ!」
よし、弁当は食べ終わった。
ここからが、俺にとって体育祭の一番の競技だ。
俺は袴を着ていて、腰にこの前買った刀のおもちゃをかけている。
「よ! 意外と似合うじゃねぇかよ!」
後から誰かが俺の肩をたたく。
大雅だ。
大雅も袴を着ていて、背中に刀のおもちゃを背負っている。
そして、左腕に包帯を巻いている。
「お前な……これから演劇やるのに怪我なんかすんなよ……」
「こんくらい大丈夫だろ? それより、お前と戦えると思うと嬉しいな」
本当に喧嘩バカだ……。
「私はお婆さんだー! 今日はピーマンの肉詰めを食べよー!」
お婆さん役の人がそんなことを言って段ボールでできた台所みたいなところに行く。
その上にはピーマンが一つ。
「あー、これまた美味そうなピーマンだなー! 投げてみるか」
お婆さん役は舞台裏にピーマンを投げる。
……あ、気づいた人もいると思うけど、お婆さん役のセリフが微妙に変わった。
って、ここから俺の登場じゃん!
ピーマンから生まれる桃太郎!
ど、どんな演技力でいこう……。
敢えて真面目にいこっかな……?
そっちの方が面白そうだし。
俺は舞台裏から出る。
その瞬間に『おー!』って声に包まれる。
ピーマンが……刀持った男に変わるなんて……。
誰も展開理解できてねぇだろ……。
「お? ピーマンが男になったぞー? なんて名前だ?」
「俺か? 俺は桃太郎だ。よろしくな!」
俺のセリフが終わるとともに、『キャー!』って女子生徒たちの歓声があがる。
『イケボ―!』とか聞こえる。
正直嬉しいけど……。
「そーか、桃太郎か……。早速で悪いんだが、鬼ヶ島に行って鬼を殺してきてくれないか?」
はい、また急展開。
……それと、一つ相談がある。
ここから『桃太郎』が面白くなる。
冬乃と白斗のバトル、水麗の怒り、俺と大雅の本気。
意外と盛り上がった。
いや、めっちゃ面白かった。
バトル漫画とかにありそうで。
感動もした。
でも俺は気づいた。
『これは恋愛物語』ということに。
というわけで、ここで『桃太郎』の内容は書けない。
気になる人がいたら、今度どこかに書くから許して。
「いやー、大成功だねー!」
本部に戻ったら冬乃が言ってくる。
「まぁ、大成功だったな」
「次は三年生の演劇だな。陸上部の先輩の演劇が楽しみだな」
……? あれ?
三年生の……?
二年生は……?
「二年生はどうなったのー?」
「なんか順番が前後したらしい。三年生のあとに二年生らしい」
ああ、そういうことか。
ってか次、酒井先輩か……。
「我等の演劇……だいぶカットされたな……。我、頑張ったのに……。……じゃあ……クイズ……。『康輝たちが遊園地に行ったとき、康輝と水麗は何時何分に遊園地の入口の前についた?』。具体的な数字だ……」




