第11話 喧嘩 〜壱〜
今回は少し短いです
新坂皆嘉は俺にポケットナイフを振り下ろす。
……遅い。
俺はそれを躱し、新坂皆嘉を殴ろうとする。
でも、多分この攻撃は躱されるだろう。
そのことを頭に入れて、俺は足で新坂皆嘉を蹴ろうとする。
しかし、予想外だった。
新坂皆嘉の顔面に俺の拳が当たる。
鼻血が出ている。
ヤバい、今脚の動きは止められない!
そして、俺の脚は新坂皆嘉の腹に当たる。
新坂皆嘉は吹っ飛び、そのまま動かなくなる。
……殺してないよな……?
いや、弱すぎだろ!
喧嘩初心者か!
俺は新坂皆嘉の脈を診る。
……よかった、生きてる。
気絶しているだけだ。
それが分ったらこいつの体に用はねぇ。
俺は人質になっている二人の縄を解く。
「お兄ちゃん……ありがとう」
「助かったぞ、危うく怪我するところだった」
水麗ともう一人の女子高生は立ち上がる。
「ああ、お前、怪我してないのか? さっき蹴られてたけど……」
「あのくらい平気だ。それより、お主も本当に大丈夫か? ナイフ相手に素手で戦っておったが……」
「全然平気だ」
俺らが会話している姿を水麗は覗くように見る。
……しかも、なんか目を細くして笑っている。
「あ、申し遅れた。我は室井美月だ」
「……イチャイチャしてるところごめんね。アイツ、どうするの?」
水麗が新坂皆嘉を見ながら言う。
……イチャイチャ……?
「まぁ、気絶してるだけだし。ここに置いておけばいいだろ。さ、帰るぞ」
俺がそう言うと、水麗と美月は俺の前を歩く。
……また、人を殴ってしまった……。
……芽依……ごめんな……。
約束……破って……。
「へー」
三人が楓野公園から姿を消した後、一人の男が新坂皆嘉の体に近づく。
「俺のスピードに追い付いたからおかしいと思ったぜ」
そう言って男は新坂皆嘉の顔面を覗くように見る。
「……橋本康輝、興味持ったぜ」
そう言った男は、先刻、康輝の教科書を運ぶことを手伝った男だった。
※新坂皆嘉はちゃんと帰りました




