第109話 借り物競争 〜前〜
「前回のクイズの答えは『ラーメン屋』だ!」
開始の合図の笛が響く。
それと同時にそれぞれの団の一人が走り出し、机の上に置いてある箱に向かう。
その箱から一枚紙を取り出し、書いてあるものを見る。
……みんな三十秒くらい停止してる……。
なんて書いてあるんだろう……。
しばらくすると、それぞれの人が保護席に向かう。
今俺らは『借り物競争』をしている。
ちなみに俺はアンカーになった。
借り物競争なんてあんまりやったことないし……どれくらい難しいんだろう……。
俺の前は大雅。
めっちゃニヤニヤ笑ってる。
正直怖い。
って、次白斗じゃん……。
どんな風にやるんだろう……。
白斗の番になる。
白斗は涼しい顔で走り、箱の中から紙を出す。
スピードがめっちゃ速い。
「…………」
白斗は黙って紙を見つめたあと、俺に向かってくる。
俺……?
「康輝、『キャバ嬢の名刺』って持ってるか?」
「……はい……?」
「キャバ嬢の名刺」
え……?
キャバ嬢の名刺……?
「康輝なら持ってると思って来たんだが……」
「持ってるわけねぇだろ!」
「確かに、いつもキャバクラに行ってそうな顔してるな」
大雅が俺の前でつぶやく。
キャバクラに行ってそうな顔って……どんな顔だよ……。
「つまり、持ってないんだな?」
「持ってるわけねぇだろ!」
「そうか、じゃあ誰かの保護者からもらってくる」
白斗はため息をつき、保護者席の方に向かう。
十六歳だぞ……俺……。
「……? あいつ、ちゃっかりゲットしてんじゃん」
大雅がまたつぶやく。
今度は白斗が行った方向を向いている。
俺は白斗を見る。
白斗は何かの紙を持っていた。
多分、キャバ嬢の名刺だろう。
そんな白斗に向かい合っているのは俺の父さん。
……ってことは……。
「……お父さん……! また行ったんだ……!」
結構前の方にいる水麗の声が聞こえる。
めっちゃ怒ってそうな声だった。
しかも『また行った』って……。
まぁ、いつも仕事して疲れてるだろうし、そのくらいは許してあげようよ……。
「よし! 俺だ!」
大雅が走り出す。
残りは大雅と俺。
大雅が箱から紙を出す。
そして数秒かたまる。
どうしたんだろう……。
「……康輝ー! 『液体』って書いてあるんだけどー!」
大雅がその場から叫ぶ。
液体か……。
「こんな簡単でいいのかー!?」
簡単……?
まぁ、確かに唾液とかも液体だしな……。
なにするんだろう……。
そう思って大雅を見てたら、大雅は自分の左腕を爪で裂く。
結構血が出てる。
液体ってまさか……。
あの血のこと……?
大雅……まだ競技残ってるのに……怪我なんかすんなよ……。
「大雅……もう少し自分の身体、大事にしようよ……。絶対痛いじゃん……。……あ、クイズ! 『康輝、水麗、大雅、美月の四人が一緒にいったことがあるのは?(この四人がいればよい) ①寿司屋 ②焼肉屋 ③そば屋』これは結構難しいか……? それと、作者はX(旧twitter)をやっている! 作者マイページのプロフィールから!」




