第106話 大玉送り
「前回のクイズの答えは『楓野学園』だ! 我等の学校だな!」
「それでは、よーい―――」
辺りに前崎先生の声が響く。
俺と白斗は大玉の前に立っている。
「―――スタート!」
先生の言葉と同時に笛が鳴る。
すると、白斗が大玉を転がした。
やっぱ速いな……。
俺も全力で走り、大玉と白斗に追いつく。
大玉が間に入る。
誰も大玉に触らない。
でも大玉は大雅と皆嘉のところに行く。
二人はそれを一度受け止め、再び転がす。
大玉がカラーコーンを一周する。
あとは二人が俺たちのところに大玉を投げるだけだ。
二人は腰を低くし、大玉を投げる。
それは真っ直ぐ俺と白斗のところに来る。
俺らはそれを受け止め、大玉が最初にあった場所に転がす。
よし、これで終わり―――
「まだだ、もう一周ある!」
白斗が叫ぶ。
もう一周あるの……?
そう思いながらも俺はまた大玉を転がす。
また生徒たちの間を大玉が転がり、大雅と皆嘉が大玉を投げる。
そして、また最初にあった場所に大玉を置く。
そのとき笛が鳴った。
勝ったのかな……?
二組と三組の方を見ると、どっちもまだ終わってなかった。
今二周目に入ったところだ。
まぁ、そりゃそうなるよな……。
大雅、皆嘉、……白斗が運動神経いいことは知らなかったけど……、こいつらがいれば勝ち確定だもんな……。
「お主等……ひどすぎるだろ……」
競技が終わり、本部に戻ったときに美月に言われた。
「ひどいって……だいたいは大雅と皆嘉とかのせいだし……」
「本当にずるいよ!」
冬乃も俺に文句を言う。
ずるいって言われても……。
「すごかったですね!」
俺の後ろから女の声。
振り向くと、帽子を被ってサングラスとマスクをしている女がいた。
「えっと……誰……?」
冬乃が女を見ながら言う。
確かに……こいつ誰だ……。
「放送も聞いてましたよ」
女はそう言ってサングラスとマスクを外す。
……! この人……!
俺がショッピングモールでナンパした人だ!
「さすが康輝さんです!」
「えっ……なんでここに……!」
「気になったので!」
「ええ……」
「えっと……二人で話しているところ悪いんだが……どちらさまだ? 我は知らないんだが……」
知らないの……?
あのときいたよね?
いや、こいつらは隠れてたんだ……。
「これからも見てますね!」
その人はそう言い、本部から離れていった。
来てたんだ……。
なんていう名前だっけ……。
メールだと『Rira』ってなってたけど……。
しかも、なんでマスクとサングラス……?
めっちゃ顔隠れてたけど……。
「ナンパされた女……! ちゃんと体育祭に来た……! やはり康輝はモテモテだな……。ではクイズだ! 『水麗の誕生日であり得るのは? ①5月7日 ②7月7日 ③9月7日』。推理系だな。それと、作者がユーザーネームを変えたのだが、どうだ?」




