第104話 美月の声
「前回のクイズの答えは『②』だ!」
『生徒の皆さんに、お知らせです』
あれから十数分経つと、冬乃がマイクに向かって言う。
冬乃のことだから『みんなにお知らせだよー!』とか言うかと思っけど、真面目にやってる。
『もうしばらくしますと、開会式が始まります。生徒の皆さんはアリーナに降りてきて、所定の場所に並んでください』
冬乃の言葉に数人の生徒が動く。
そのあと、ほぼ全員の生徒が動いた。
「結構緊張するね……」
冬乃がマイクのスイッチを切ってから俺に顔を向ける。
こいつでも緊張するのか……。
ま、人間誰でも緊張するか。
「意外と良かったな。練習とかしてるのか?」
美月が紙を見ながら言う。
「いや? これが初めてだよ」
「そうか……我とは違うな……」
……なんかすっごく意味深な言葉に聞こえるけど、敢えて聞かなかったことにしよう。
「私は今やっちゃったし、美月ちゃんが開会式のやつやる?」
「あー……。じゃあ我がやろっかな……」
「ちょっと君たち!」
誰かが俺らに話しかける。
体育科の教師だ。
「向こうの席で遊んでる生徒がいるんだ。椅子を蹴ったりして……。ちょっと注意してくれないかな?」
椅子を蹴るって……。
高校生にもなってそんなことするやついるのか……?
「美月ちゃん、早速仕事だね」
「我が言うのか……?」
「うん、やってみな」
冬乃がその場から離れ、代わりに美月がその場所に行く。
そしてマイクのスイッチをつけた。
なんて言うんだろう……。
『生徒の皆さん、椅子を蹴ったりする行為はやめてください。繰り返します。椅子を蹴ったりする行為はやめてください』
俺はめっちゃ驚く。
美月が言ってることに対してではない。
美月の声に。
なんかいつもより大人って感じがする。
めっちゃ静かな女の人って感じ。
「……よし、出せた」
美月はマイクのスイッチを切る。
「美月……お前……どうやってその声出したんだよ……」
「最近練習してる声なんだが……変だったか?」
「いや、変ではなかったけど……」
練習してる声って……。
新しい声とか出したいのかな……?
「声の仕事やってるの? 声優とか」
俺が思っていることを冬乃が訊く。
美月は笑いながら首を横に振る。
「そんなにすごい人物ではない」
いや、結構すごい人物だと思うけどな……。
言葉遣いとか……。
「さてと、開会式が始まるな。とうとう体育祭か……。大雅とか皆嘉、大丈夫かな……?」
「そんなにすごいんだ……。ま、見てみるよ!」
冬乃は伸びをして、水筒を掴む。
そして中にあるものを飲んだ。
今年の優勝は一組か……。
「今日はギリギリ投稿できた……。それより、我の声、すごかったか? ではクイズだ! 『美月は生物が大好き。第何話からそれがわかった?』。これは覚えててくれてると嬉しいな」




