第100話 買い物
「前回のクイズの答えは『陸上部』だ!」
「? お兄ちゃん、どこ行くの?」
家とは反対の方向に歩いている俺に水麗が不思議そうに訊く。
ちなみに今は俺と水麗しかいない。
大雅は皆嘉と二人で帰った。
白斗と冬乃は知らん。
美月は『今日は……ちょっと……独りで……』って言って独りで帰った。
俺のせいか……。
それより、水麗の質問に答えなきゃ。
「演劇で使う小道具を買いにいくんだよ。さっき俺が先生に『刀のおもちゃ買え』って言われただろ」
「そうなの?」
「そうなの」
どこの店に刀のおもちゃなんか売ってんだろう……?
「あ! あったよ!」
水麗が向こうで何か言う。
やっと見つけた……。
「ほら、これ!」
水麗は手に何か細いものを持っている。
鞘に収まれた刀のおもちゃだ。
「おお、いいな。ありがとう」
「うん!」
「よし、これを二本買うか」
「……二本……?」
「ああ、刀のおもちゃは俺と大雅が使う。だから二本」
俺は水麗がいた方向に行き、俺の持っているものと同じものを持つ。
二本で二千円……。
まぁ、いっか。
「よし、帰るぞ」
会計をすませ、俺と水麗は店から出る。
あー、疲れた。
「よぉ、兄ちゃん」
誰かが俺に話しかける。
サングラスをかけた男が三人。
ヤクザみたい。
「いい女持ってんな。ちょっと借りるぜ」
男はそう言って、水麗の腕をつかむ。
ナンパかよ……。
「あのさ、それ俺の妹なんだけど」
「安心しな。ホテル行って二時間したら帰すから」
男たちは水麗を強引に抱く。
水麗はめっちゃ嫌そうな顔をしている。
「だからさ、俺の妹だから手出さないでくんない?」
「兄ちゃん、俺らにそんなこと言っていいのか? 俺らは年上だぞ?」
「は? 知らねぇよ」
「言葉遣い悪いなぁ、兄ちゃん。俺らを怒らせると怖いんだぜ?」
男が馴れ馴れしく俺の肩に手を乗せる。
気持ち悪いな……。
「へー、テメェらを怒らせると怖いのか。見てみてぇな」
「兄貴、俺がやります」
一人の男が俺に殴りかかる。
戦闘慣れしてるな……こいつ……。
俺はその拳を避け、その男のみぞおちを本気で押す。
その男はめっちゃ苦しんでる。
「よく言えたもんだな、『俺がやります』なんて似合わねぇ言葉。それより、早く俺の妹を返してくんないかな?」
「……兄ちゃん、ちょっとこっち来い」
他の男が俺に話しかける。
「は? 嫌だよ。早く帰りたいんだけど」
「……俺ら、ヤクザだぞ? 銃とかナイフとか持っててもおかしくないんだぞ?」
銃とナイフか……。
銃は避けられる、ナイフは相手の動きをよく見れば余裕で避けられる。
どっちにしろ俺が勝つ。
「……ちょうどここは人通りが少ない。喧嘩ならここでやろうぜ」
俺の提案に男たちはうなずく。
よし、久しぶりに暴れるか。
……久しぶりか……?
「ついに100話だ! ここまで来れたのも、全部読者様のおかげだ! ありがとう! これからも引き続き、『義理の妹に恋されてます』をよろしくな! そしてクイズだ! 『第1話のタイトルは?』。それと、100話でヒロインがナンパされるって……結構すごいな……」




