第10話 学校一日目、終わり
よし、これで終わった。
今、終礼が終わったところだ。
みんな、ゾロゾロと教室を出ていく。
あー疲れた……。
俺はしばらく目を閉じる。
……あ、このまま寝れる。
いや、こんなことしている場合じゃない。
俺が目を開けると、もう教室には誰もいなかった。
……おかしい。
水麗なら……。
「お兄ちゃん! 一緒に帰ろ!」
とか言ってくる気がするのに……。
そして、俺はあることに気づく。
俺の机の上に、紙が置いてある。
その紙には『このあと楓野公園に来い』と書かれていた。
……まさか……な。
水麗を人質にとったのか……?
まぁ、行ってみるか。
「あ、やっと来た」
俺が楓野公園という公園の中に入ると、誰かがそう言う。
ここは人通りが少ない道で、目立たない。
「こっちだよ」
同じ声でまた誰かがそう言う。
新坂皆嘉だ。
その隣には、ロープで手と足を縛られた、水麗と一人の女子高生がいた。
うちの学校の制服だ。
「水麗……!」
「お兄ちゃん……」
「感動の再会はそこまで」
新坂が手をたたきながら言う。
「なぁ、橋本康輝。俺と喧嘩しろ」
「は? 嫌だよ」
「へー、こんな状況でも?」
新坂はポケットからポケットナイフを出す。
そして、刃を出す。
「……何する気だ?」
俺が言うと、新坂は水麗の首にナイフをたてる。
「俺と戦え、じゃないとこの女を殺すよ? ま、こっちには人質が二人いるから、殺しても何の害もないけど」
……へー、こいつ、戦いに慣れているのか?
人質は二人以上。
相手を喧嘩に誘うことの絶対条件だ。
「……お主、我を人質にしているつもりだと思うが、我はあの男と何の関係もないぞ?」
水麗じゃない方の人質の女が言う。
……どういう言葉遣いだ?
「人質は人質らしく黙っていればいいんだよ!」
「うるさいのう! 我を傷つけるなら傷つければいいだろ! 何故この女も人質にする! 何故あやつと喧嘩いたい!」
「だから黙ってろ!」
新坂皆嘉がその女を蹴る。
……流石に我慢できねぇ……。
「……おい、新坂……!」
「ん? 何? やっと戦う気になった?」
「……ああ、さっきまでその気はなかったんだけどな……! お前の今の行動でその気になった……!」
俺はリュックを捨て、ブレザーを脱ぎ捨てる。
新坂皆嘉は嗤い、ナイフを俺に向ける。
「へー、本気で行くよ?」
「ああ、本気で来い! 俺も手加減できねぇ!」
新坂皆嘉は俺に向かって走る。
いいだろう、骨折しても知らねぇぞ!
お! 我と同じ話し方の女の子が出てきました!




