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俺と"ジーク"と少年で

テンション上げ上げ、気力最大です!

 先ずは一体撃破だ!だが敵は一体だけじゃあねぇ!次が来る!


 『ッシャアッ!まずは一体!次!来るぞ!』

 「ひぃっ!ど、どうすれば…!」


 安心しな。少年が勇気を持って"ジーク"を動かしてくれりゃあ、俺がこの窮地を脱して見せる!

 それに、幸いな事にバケモン共はあまり頭がよくなさそうだ。折角三体もいるっていうのに一体ずつしか襲い掛かって来ねぇ。最初に突っ込んで来たバケモンが離れてからようやく次のバケモンが迫って来た。

 まぁ、"ジーク"の大きさがこの場所(今更だがこの場所は地下室らしい)にはデカすぎて一斉に襲えるようなスペースが取り辛いってのもあるが、俺達にとっては好都合だ。


 今の少年なら上手くやってくれる。バケモン共に目にもの見せてやろうぜ!


 『少年!両腕を曲げて前に出すんだ!ガードの姿勢だ!その状態で俺が合図を出したら一歩前に踏み出せ!』

 「はっ、はいっ!ガードの姿勢、ガードの姿勢…!」


 少年は問題無く指示通りに操作してくれる。それに合わせて俺は頭部を守るように両前腕部を揃えて前方に構える。これで正面から見た場合、"ジーク"の巨体をほぼ全てシールドで隠れるようになったわけだ。


 『良ぉし!いいぞぉっ!その調子だぁ!!』

 「は、はいっ!」


 都度、少年を褒める事を忘れない。少年には圧倒的に自信が足りない。どんな小さな事でも上手くいったのなら褒めてやり、例え失敗したとしても励ましてやる必要がある。

 そうやって自信を持ってもらわねぇと、今後俺と"ジーク"と共に活躍する事なんて出来なくなっちまうだろうからな。


 おっと、次のバケモンは爪じゃなくて頭突きをかまそうとしてくるみてぇだな。ちょうど良いぜ!頭にでっかい衝撃与えてピヨらせてやらぁっ!


 『ここだぁっ!"ジーク"を一歩前へっ!』

 「はいっ!」


 バケモンが突っ込んできたタイミングに合わせて少年に脚部を動かしてもらえば、俺がそれに合わせて勢いよく"ジーク"一歩踏み出させる。

 当然、両腕部のシールドも前方に動くから、バケモンからすれば自分から迫りくる壁に頭をぶつけに来た形になる。


 「ギュベェエッ!?!?」

 「ふぎゃあっ!?」

 『大丈夫っ!"ジーク"ならこの程度、何ともないぜっ!!』

 「僕が、"ジーク"が、戦えてる…!?」


 激しい衝撃が"ジーク"全体に襲い掛かり、その衝撃に少年が狼狽えるが、力強く応答する事で安心させる。

 シールドバッシュって奴だ。読み通り思いっきり頭をぶつけたバケモンは死にはしなかったが、ひっくり返って気絶する事になった。


 『今だ少年!両手を前に出して少し屈め!』

 「両手を前に出して…屈む…っ!」


 ひっくり返ったバケモンの尻尾に向かって両腕部を伸ばし、左右のマニピュレーターでガッチリと尻尾を掴む。


 『良ぉし!全速で腰を回転させるぞっ!バケモンを思いっきりブン回すんだっ!しっかり捕まってろよぉっ!!』

 「腰を思いっき回転させうわあぁああぁっ!!?」


 しっかりと踏ん張り、腰部を全力で回転させる。こういう時、人間の体と違って機械の体は360度回転できるからぶん回すのにスゲェ楽だ。

 かなりパワーがあるおかげで回転の勢いも十分だ。その勢いは高速回転と言って十分に通用する回転速度だ。


 『どぅぉおおりゃぁああああっ!!』


 掴まっとけ、とは少年に言ったが、流石に高速で回転したら驚いちまうだろうし、目を回しちまうのも無理はねぇか。

 大丈夫、だよな・・・?やっぱ、少年には後でシートベルトを追加するように言って置かねぇとな!


 倒れたバケモンの尻尾を掴んで勢いよく回転するって事は、だ。ひっくり返ったバケモンをブン回してるって事だ。つまり、ジャイアントスイングって奴よ!

 未だしどろもどろしてる残りのバケモンに、このままブン回してるコイツを投げ飛ばしてぶつけてやらぁっ!


 『少年!大丈夫かぁ!?そろそろ手を放すぞ!コイツを残ったヤツにぶつけてやるんだ!』

 「は、はいぃ~…。」


 若干目を回しながらも、少年はしっかりと操作が出来てる!やるじゃねぇか!きっとマギ・アーマーを操縦する才能が、少年にはあるんだと思うぜ!


 『リザァードォオオ…ハンッ!』


 少年の操作に合わせてバケモンの尻尾を放せば、狙い通りに目を回したバケモンは残りのバケモンに向かって勢いよく吹っ飛んでいく。


 『マァアアーーーッ!!!』

 「ギュギェァアアアッ!?」


 残ったバケモンにとっては、いきなり過ぎて対応できなかったんだろうな。そのまま投げ飛ばされたバケモンとぶつかり合って、一緒に壁まで吹き飛んでいった。

 ここまで来たら、後はトドメだ!ぶちかましてやるぜっ!!


 『チャンスだ少年!天井にぶつからない程度に跳び上がるんだ!』

 「ジ、ジャンプするって~、事ですよね~…?」

 『おうよ!そんでもって、落下が始まったら思いっきりペダルを踏むんだ!いけるな!?』

 「は、はい~…。」


 まだ目が回ってるのか、少年の声はちと間延びした感じになってる。が、それでも"ジーク"の操作自体は問題無いようだ。

 いや、この少年、ホントにスゲェ才能があるかもしれんぞ!?俺の相棒に相応しくなるのも、そう遠くないかもしれねぇな!


 『ジイイイィィク!』


 少年の操作に合わせて"ジーク"を跳び上がらせる。当然、壁にぶつかったバケモン共に向かってだ。


 そんでもって"ジーク"が落下を始めた直後、俺が言った通りに少年が思いっきりペダルを踏み抜いてくれた!

 タイミングバッチリじゃねえか!ホントにスゲェぞ少年!


 『クラァアアアッシュッ!!!』


 背部の排出口から大量のエネルギーが放出され、その反動で勢いよくバケモン共の首に向かって"ジーク"がすっ飛んでいく。

 後はバケモンとぶつかるタイミングで蹴りを放つだけだ。そこはサービスして俺が自分で動いてやるぜ!

 ジークの重量は相当のもんだ。そんな重量が思いっきり加速をつけてぶつかってくりゃあ、どうなるか。


 硬い何かを粉々に砕く感触が俺の脚部に伝わり、バケモン共が白目を剥く。それだけに留まらず、2体のバケモンの首を"ジーク"の脚部がぶち抜いた!当然心臓が動いてる様子は無し!


 戦闘終了!俺達の勝利だ!!


 『ヨッッッシャアァッ!!やったぞ少年っ!俺と"ジーク"と少年で、コイツ等と戦い、勝ったんだっ!』

 「戦って、勝った…?勝てたの…?僕…?」

 『おうよっ!"ジーク"と共に初陣で見事初勝利ってなぁっ!胸を張りな!自信を持ちな!少年がこれまでやってきた事が、今この瞬間、報われたんだ!』

 「うっ、ぐずっ…!ぼ、ぼぐが…っ!ぼぐの、"ジーク"が…っ!」


 少年が鼻水が垂れる事もお構いなしに嗚咽をこぼしながら泣き出す。

 まぁ、無理もねぇわな。これまでの頑張りが明確な形となって現れて実感する事が出来たんだ。嬉しくねぇわけがねぇ。


 良いねぇ…。今までの努力が報われた瞬間ってのは。こっちまで湿っぽくなってきちまうぜ…。まぁ、俺に涙を流す機能は無ぇんだが。


 襲撃を受けている以上、本当ならこのまま外の様子を確認したいところだが、もう少しだけ感傷に浸らせてやるとしよう。


 さて、俺は今の内に、何時でも動けるように周囲の状況を確認しておくか!



 周囲の状況確認が終わる頃には、少年も落ち着きを取り戻せたようだ。心音も呼吸も安定してる。

 尤も、"ジーク"には"アポカリプス"に搭載されていたようなセンサーの類があるわけじゃねぇから、俺が状況確認に手間取ったって言うのが大きいんだが。


 『少年。もう落ち着いたみたいだな?』

 「はい。サブロウさん、ありがとうございました。サブロウさんがいてくれなかったら、僕はきっと、"ジーク"が動いてくれたとしても、あんな風に戦う事なんて出来なかったです…。」

 『お互い様だぜ。少年が"ジーク"に乗り込んでくれなきゃ、どの道俺もすぐに動けなくなってただろうからな。勇気を出して"ジーク"を操縦してくれて、ありがとよ。』


 少年が俺に感謝してくれているように、俺も少年に感謝してる。

 少年が"ジーク"に乗り込もうが乗り込むまいが、どの道トカゲのバケモン共、魔物って連中はここにも来ていただろうからな。

 少年が"ジーク"を操縦してくれなけりゃ、転生した直後にまたいきなり死ぬところだったぜ。


 「えへへ…。お礼を言われるのって、何だか照れ臭いですね…。」

 『だよな?俺だって照れ臭ぇんだぜ?俺にとっちゃ当たり前の事をしてるだけなんだ。礼を言われると、むず痒くなっちまうぜ。』

 「そんな事言ったら、僕だってサブロウさんに言われるままに"ジーク"を動かしただけですよ?」


 少年は謙遜してるが、全然んなこたぁない。


 何せ、何処をどう動かせって指示を出して、指示通り正確に動かす事が出来る奴なんざ、ほんの一握りしかいねぇんだからな。

 しかも、少年は戦闘の間は終始ずっと目を閉じたままだった。俺の前世の相棒達にだって、目を瞑りながら正確に"MT(メガトレーサー)"を操縦出来た奴なんて、一人もいなかった。


 間違いなく天才だよ、少年はさ。後は、少年に度胸と勇気と覚悟と経験が付いてくりゃあ、俺と"ジーク"と少年で、きっとどんなヤツ等とだって戦えるだろうよ。


 おっと、思うだけじゃなくて、そう言う事はちゃんと声に出して伝えてやらねぇとな。

 ただでさえ少年は自己評価が低いんだ。他人からバンバン褒めてやって自信をつけさせてやらねぇと。


 『少年。さっき戦ってる間目を閉じてただろ?』

 「あぅううぅ!ご、ごめんなさいぃ…!」

 『違う違う。責めてるんじゃねぇよ。むしろその逆だ。褒めてるんだよ。』

 「へ?」


 あんだけの事をしたってのに、少年にはまだ十分な自信が持ててねぇようだ。


 『少年が知る中で、マギ・アーマーってのを目を閉じたまま動かす事が出来るのは、普通の事なのか?』

 「い、いえ…。目を閉じちゃったら何も見えないじゃないですか。何をどう動かしたら良いのかなんて、分からなくなっちゃいますよ?」

 『だが、少年は俺の指示通り正確に"ジーク"を動かせたじゃねぇか。だったら、そいつは間違いなく凄い事だぜ?』

 「で、でもそれは…。」


 他人に出来ない事が出来るってのは、自慢になる事なんだが、少年にはその自覚が無ぇみたいだ。

 と言うか、これはアレだな?俺の指示に従ったから上手くできたと思ってんな?だから自分の実力じゃないってか?んなわけねぇだろうが。


 『少年。正直俺はな、さっきの戦闘、もっと苦戦するかと思ってたんだ。』

 「え?」

 『少年が俺の指示に合わせて、タイミングよく、正確に"ジーク"を操縦してくれたからこそ、あそこまで余裕を持って魔物に勝つ事が出来たんだぜ?』

 「でも、サブロウさんって、簡単な操作で戦えるようにするために作られたんですよね…?僕はそのサブロウさんの指示に従っただけだから…。」


 だぁあっ!話が堂々巡りじゃねぇか!初操縦でそんな事が簡単に出来るわけじゃねぇっつってんのに、何で分かってくれねぇんだ!?


 怒鳴りつけてやりてぇところだが、ここで怒鳴っちまうと少年はビビりだから、俺に怯えちまいかねねぇ。そいつぁ、少年との今後の関係にあんま良い影響を与えねぇだろうからなぁ・・・。


 ここは、少年と良好な信頼関係を結ぶためにも、根気よく少年を怖がらせずに自分の能力を認識させるべきだよな。

 つっても、魔物の反応はまだあるみてぇだから、あんま悠長な事しちゃいられないんだが。


 『そう簡単な話じゃねぇんだがなぁ。しゃあねぇ、今はそう言う事にしとくか。この町の状況はそれどころじゃねぇしな。』

 「へっ?」

 『少年が自分で言ってただろ?この町は今、魔物から襲撃を受けてるってよ。』

 「ああっ!?そ、そうでした!ド、どどド、どうしましょう…?」


 おいおい、自分で言っておいて忘れてたのかよ。

 まぁ、それ言ったら俺も少年に言われた傍から情報収集のために意識から抜けてたんだから、お互い様かもしれんが。


 『俺としちゃ、上に登って外の様子を確認したいんだがな。どの道、ここにいても何にもならんだろ?下手すりゃまた魔物が下りてくるかもしれん。』

 「で、でも、上に行ったら戦闘になりますよね…?」

 『嫌か?心配しなくても、少年はちゃんと戦えるぜ?』

 「うぅ…僕達が無理に戦わなくても、ここで待ってたら、街の皆が魔物を倒してくれるかもしれないですし…。」


 乗り気じゃねえのも無理はねぇか。

 さっきの戦闘は仕方なくだったわけだが、じっとてりゃあ戦わなくて済むかもしれねえんだからな。


 『そうかもしれん。だが、そうじゃねぇかもしれん。そんでもって、魔物がここに来るって事は、だ。最悪、上にいる連中が魔物にやられちまったからって事なのかもしれん。』

 「ネ、ネガティブ過ぎません…?」


 少年も俺の言い分が不用意に不安を煽っているように聞こえたんだろうな。まぁ、実際その通りだ。

 こういうやり方は(こす)いと思うから好きじゃねぇ。正直、あんまやりたかない手段なんだが、少年に奮い立ってもらうにはって奴だな。


 『不安を煽るような言い方をしてるのは否定しねぇよ。だが、こういう時ってのは、常に最悪の場合を想定しておくもんだ。んでもって、その最悪の事態を避けるために、自分に出来る事を全力でやる。』

 「自分に…僕にできる事…。」


 少しはその気になってくれたみてぇだな。


 だが、よりその気になってもらうためにも、少年には悪ぃがもうちっとだけ煽らせてもらうぜ?

自信を持てない少年に発破を掛けます。

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