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真打登場

補給イベントです。

 連中はコッチに来るなり、みんなして少年を気遣った言葉を掛けてくれた。


 「カルモ!大丈夫か!?息が上がってるぞ!?」

 「無理するなよ?無茶なんてもっての他だからな!」

 「お前とサブロウさんのおかげで、俺達は大分余裕があるからな!少し休んだ方が良いぜ?」

 「ポーションはあるか?無いようなら俺達のを少し分けてやるよ!2人のおかげで、全然使わなかったからな!かなりの量が余ってるかんだ!」


 どうやらこの連中、少年が疲れてきてんのを知って、わざわざここまで来てくれたようだな。んでもって自分達の余ってる回復薬を俺達に、って言うか少年に譲ってくれるらしい。

 あったけぇ…。何だコイツ等、メチャクチャ良いヤツ等だな!

 くぅ~~~!愛されてんなぁ!少年!こういう好意は素直に受け取っとくもんだぜ?遠慮なんてすんなよ?


 「み、みなさん…。」


 とは言いたいとこなんだが、もらっちまって良いのかね?俺としては、コイツ等の支給された物資を受け取っちまったことで、コイツ等が危険な目に逢わねぇか、ちと不安なんだが…。


 『正直、メチャクチャありがてぇ。俺はともかく、少年は一度休ませてやらなきゃと思い始めてたとこなんだ。だが、良いのか?俺達が薬をもらう事で、お前さん等に支障は出ねぇのか?』

 「大丈夫だって、ホントに俺達スゲェ余裕があるんだ。つーか、2人が活躍しまくってたおかげで、後衛の俺達が全然活躍できなかったぐらいなんだぜ?」

 「何せ俺達が狙いを付けたそばから魔物が風穴開けて倒れてったからなぁ…。マジでビビったぜ…。」

 「サブロウさん、アンタが味方でホントに助かったよ!」

 「てなわけで、少しは俺達の活躍の場も設けさせてくれよな!」


 あれま。んな事になってたのか。ってことは、コイツ等に任せりゃ、大分魔物の数を減らせるって事か?


 だとしたら、イケるかもしれねぇな!だがその前に、この連中と同じような状態のヤツ等は他にいないか、確認した方が良いな。


 戦闘中はちょくちょく『魂索』を使って周囲の状況を確認し続けてたんだ。魔力の減少具合からして、全員が全員消耗してねぇってこたぁねぇはずだ。


 もし余裕があるのがこの連中だけってんなら、流石に止めるぜ?

 余裕があるからって、こんだけの人数じゃ流石に魔物の大群を押えられるとは思えねぇしな。


 『それで、余力のある連中は他にいるのか?』

 「勿論だぜ!その連中はもう前に出ちまってるよ。」

 「さっきは2人に助けられたからな!礼を言いに来たんだ!」

 「魔物が抜けてきたらこっちまで二人が来てあっという間に魔物を倒してくんだもんなぁ…。」

 「"ジーク"がメチャクチャ頼もしく思えたよ…。カルモ、ホントに凄かったぜ!」


 おっ、いいぞいいぞ!お前等も少年の事褒めてやってくれ!

 少年にはもっと自信をつけてもらいてぇんだが、どうにも俺や"ジーク"のおかげって気持ちが強すぎて謙遜するんだよ。


 「そんな…。ボクは別に…。凄いのはサブロウさんが作った武器とそれを扱える"ジーク"ですし、僕がやった事と言えば、サブロウさんの指示に従って"ジーク"を動かしただけですから…。」


 な?こんな感じにす~ぐ謙遜しだしちまうのよ。俺と"ジーク"と少年がいなけりゃ、この成果は出せなかったってのに、ホンット強情な少年だぜ。


 お前等、何を生暖かい目で俺達を見てるんだよ?その見るからに[しょうがないヤツだなぁ…。]って顔でコッチを見るんじゃねぇ。納得してねぇでもっと少年を説得してくれ!


 「まぁ、カルモの言ってる事は正しくもあり間違いでもあるよ。」

 「聞いたぜ?サブロウさん、一人じゃ"ジーク"を少しの間しか動かせないって。カルモがいるからこれだけ凄い事が出来たんだ。」

 「胸を張れよ!」

 「う、うぅ~…恥ずかしいですよぉ…。」


 ナァイス!照れてはいるが、こうして少年を褒める声を沢山聞かせてやりゃあ、それが将来少年の自信になってくる!自信が付けば、少しはビビりな性格も治るだろ。


 『分かったか?これが周りからの少年に対する評価だって事だ。少年が恥ずかしかろうが無かろうが、少年は周りからスゲェやつだって思われたって事だよ。自信を持ちな!』

 「まぁ、そういう事だな。さて、俺達もそろそろ行くよ!いつまでもここで2人と話をしてたらサボるなって他の奴らに怒られちまう!」

 「だな!カルモ!ハッチを開けてくれ!ポーションをそっちに投げ入れる!」

 「わ、わかりました。あの、本当にありがとうございます。僕、ポーションの類持ってなくって…。」


 少年がハッチを開くと、その開いた隙間に目がけて一人の男が、器用に小さな瓶を3個投げ入れてくれた。

 どれどれ…ほーん…。3つとも成分は同じ物みてぇだな。前世で言うとこのエナジードリンク見てぇなもんなのか?

 うっすらと魔力反応が感知できるって事は、もしかしたら回復効果は前世のものよりも数段優れてそうだな!


 お、このポーションってのは1瓶で効果があるみてぇだな。その証拠に、3つも受け取った少年が慌ててやがら。


 「あ、あの!ど、どうして3個も!?」

 「まだまだ戦いは長引くかもしれねぇからな!予備も持っとけ!」

 「この後肝心なとこでバテちまったら、絶対に大変だからな!」

 「疲れたらすぐに使っとけよ!」


 そう言うと少年が何かを返答する前に駆け足で魔物がいる方向へと移動して行っちまった…。


 おおぉい!!アイツら良いヤツ等過ぎねぇか!?

 今回の回復用だけじゃなくて後でまた疲れた時のための回復薬も渡してくれたのってかよ!?


 大して話もしてねぇヤツ等だってのに、好きになっちまうじゃねぇか!

 ああいう良いヤツ等ってのは、俺としても死なせたくねぇ!少年の命を最優先にするにしても、アイツ等がヤバくなったら、出来る限り助けてやりてぇな!


 少年は渡された回復薬を手にしたまま迷ってるみてぇだ。息切れしてるぐれぇ体力消耗してんだから、さっさと薬を飲めっての!

 そんでもって体力回復させて、アイツ等だけじゃなくて、前衛のサポートにも戻ってやらねぇとな!


 『少年!ソイツは疲れた体を回復させる薬なんだろ!?飲まねぇのか!?』

 「えっと…飲んじゃって、大丈夫なんでしょうか…?」


 なぁにを言い出してんだこのお坊っちゃんは!薬を飲んで回復してもらいてぇから、アイツ等も少年にソレを渡したんだろうが。

 使ってくれなきゃアイル等も報われねぇぞ。


 『あったりめぇだろぉが!少年だってさっきの連中が魔物にやられちまうのは嫌だろ!?』

 「当たり前じゃないですか!」

 『だったらさっさとその薬飲んで、体を休めて出来るだけ早く戦線に復帰すんぞ!アイツ等の言い分なら、俺達はかなり役に立ってたみてぇだからな!』

 「は、はいっ!」


 ふぅ…。とりあえず納得して薬を飲んでくれたか。んじゃ、後は少年の体力が回復するまで待つとするか。

 俺は今の内に周囲の状況を改めて確認しておくかね。



 薬を飲んでから大体2分。さっきまで息切れしてた少年の呼吸も、大分落ち着いて来たみてぇだ。もう体力は回復したってことで良いのか?


 『そういや少年、さっきの薬、どれぐらいで効果が出るんだ?』

 「どうでしょう…?一応、物自体は知ってましたけど、こうして実際に使ったのは初めてですから…。」


 そりゃ、今まで戦った事が無けりゃそうなるか。

 だが、少年の健康状態は間違いなく薬を飲む前よりも改善されているようだな。呼吸も落ち着いて来てるし、疲労も幾らか回復したみてぇだ。


 俺の方も状況の確認は終わったとこだ。そろそろ行くとかね!


 『少年、イケそうか?』

 「大丈夫です。行きましょう、サブロウさん!」

 『あいよ!』


 少年の捜査に合わせて俺も"ジーク"を稼働させる。

 余力を持った後衛の連中が前に出ながら前衛をサポートし始めたおかげで、魔物の勢いを押し返すことができたんだ。


 魔物の数はまだまだ残っちゃいるが、少しずつ押し返す事ができてるみてぇだな。まだ安心はできねぇが、今んとこは順調だ。


 良し!射程に入った!そんじゃ、俺達も攻撃を再開させるとすっか!


 『少年!状況は相変わらずだ!同じ調子で頼むぜ!』

 「はい!まずは玉の装填から…。」


 休憩する前と変わらずに石ころ弾をジークレストに装填して照準を付ける。後は俺の方で微調整をしてやりゃあ…ヨッシ、命中!

 やってるこたぁ地味だが、しっかりと活躍はできてる。俺達は俺達に出来る事をやってくだけだぜ!



 あれから1時間。前に出てった後衛だった連中の頑張りもあったおかげか、状況はかなりこっちが優勢だ。押し寄せて来た大群も随分と押し戻せてる。


 最前線の連中は最初に迎え撃った場所から500mは前進したんじゃねぇかってぐらいには好調だ。


 このまま魔物共を撃退できるかとも思ってたんだが、そうはいかなかった。


 魔物共も切り札ってヤツを用意してたみてぇでな、俺の『魂索(スピリチュアルサーチ)』に今までの魔物とは比較にならねぇほどデケェ反応が現れやがった。


 最前線の連中はもう視認できてるみてぇだな。んでもってとんでもねぇ強敵だって認識したみてぇだ。

 さっきまでの勢いが失われて尻込みしてるヤツ等までいやがる。


 四足歩行の馬鹿デカい化け物だな。立ち上がるようなタイプじゃあなさそうだが、それでも全高が20mはありやがる。全長は40m弱ってとこか?

 俺の知識であの魔物の見た目を簡単に説明するなら、全身に強固な鱗を纏った、馬鹿みたいにデカいサイだ。


 更に質の悪ぃ事に、問題がなのはその馬鹿デカい魔物だけじゃねぇ。あの魔物を3分の1ぐらいまで小さくしたような、取り巻きを7体も引き連れてやがった。


 最悪な事に、その小さいヤツ等ですらジークレストの、しかも"弾丸"を使っても一撃で倒せる相手じゃねぇ。


 アイツ等が一体何なのか少年に聞けば答えてくれるかもしれねぇが、少年が知ったらほぼ間違いなく怯えさせちまう。


 今の状況で少年を怯えさせるのは駄目だ。

 最前線の連中の勢いが止まってる間にも魔物共はドンドンこっちに押し寄せて来やがる。

 少しでも魔物共の勢いを減らすためにも、少年の動きを鈍らせたくはねぇ。


 「あの、サブロウさん、何だか周りの雰囲気が変わった気がするんですけど…何かあったんですか?」

 『あ、ああ、魔物共の方で真打が出て来やがってな。ソイツ等にコッチの勢いを止められちまったんだ。』


 聞かれた以上は、変にはぐらかすと余計に心配させちまうだろうからな。一応の状況は教えておく。


 だが、全部を教えるわけにはいかねぇよなぁ…。実際の状況はかなり拙い事になってやがる。


 まず一番デカい魔物には今のところ傷一つ負わせることが出来てねぇ。そんでもってヤツの取り巻きも一体も倒せていねぇ。

 デュアンのグレートソードや馬鹿デカいランスの突撃でもダメージを与えちゃいるが、倒すまでには至っていねぇんだ。


 そんでもってそれは生身の人間達も同じだ。

 デュアン達エースのマギ・アーマーが軒並み真打の魔物共を相手にしてるせいで、今までデュアン達が相手にしてた他のデカくてタフな魔物共の相手を生身の人間達がする事になっちまってる。


 勿論、生身のヤツ等だって強ぇヤツ等はマギ・アーマーにも引けを取らねぇ強さがあるが、如何せん数が足りてねぇ。

 最初に比べりゃかなりの数を減らせたとはいえ、元の数がやたら多い。これまでの戦闘の疲れもあって、段々と物量に押され始めて来やがった。


 「後退!!いったん後退して態勢を立て直すぞ!!魔法を使える者は魔物の足止めに集中しろぉ!!」

 「焦るなよぉ!焦って動きに乱れが生じたら何もかもがパァになるからなぁ!!」

 「殿は魔導鎧装(マギ・アーマー)隊に任せるんだ!!魔導鎧装隊の援護をしつつ後退!!」


 本格的に戦線を維持できなくなってきちまった見てぇだな。生身の人間達が後退し始めちまった。

 魔法を使える連中が魔物共の足元に障害物を作ったり地面を泥に変えたりして足止めをしてるな。


 だったら、俺達はそれに便乗させてもらって、動きを止めた魔物を少しでも多く仕留めるだけだぜ!


 「サブロウさん!状況、どうなってます!?」

 『現状はコッチが不利だ!今はマギ・アーマーの連中が魔物の足止めをしながら生身の連中の後退を援護してるところだ!』

 「そ、それって…!?それじゃあ、デュアンさんは…!?」


 うぉ!?少年!?何してやがる!?何で前に出ようとしてんだ!?


 『少年!落ち着け!俺達が今前に出ても何もできねぇぞ!』

 「でも!デュアンさん達が!」


 デュアンがやられちまうことを恐れて冷静な判断が出来なくなってんのか!?

 感情で動いたとしてもどうにかなるもんじゃねぇんだ!一番傍にいる俺が、少年に言って聞かせねぇと!


 『そう簡単に大将達がくたばるものかよ!少年!俺達にできる事は何だ!?』

 「そ、それは…。」

 『心配なのは当然だ!だからこそ!俺達は俺達にできる事をやって、少しでも早く、安全に大将達を離脱させるんだよ!俺達の役割を、出来る事を見失うな!』

 「く……っ!わ…分かりました…!」


 頼むぜマジで…。デュアン達が無事に離脱できるかどうかってのは、俺達の戦果も多少は影響してくるだろうからな…。


 生身のヤツ等や前に出てった後衛のヤツ等も戻ってきたみてぇだな。俺達、ってよりも少年の事が気になって声を掛けてきた。


 「カルモ!無事だな!?お前等もそろそろ下がれ!」

 「今の内に下がっとかねぇと、間に合わなくなるぞ!?」

 「で、でも、まだデュアンさん達が…!」

 「大丈夫だ!お前等が頑張ってくれたおかげでちゃんと離脱できる!」


 とは言ってくれてるが、正直チットばかし怪しいってのが現状だ。

 ザコ共はともかく、真打とその取り巻きがまるで勢いを失っていねぇ!足が遅いから何とかなっちゃいるが、取り巻きの一体だけでも倒しておかねぇと確実に押し切られる!


 『俺達ならもうちょい粘れる!アンタ等は先に行っとけ!』

 「分かったよ…!死ぬなよ…!」

 「サブロウさん!カルモを頼んだぜ!」

 『おうよ!』


 ゆっくりと後ろに歩きながらジークレストで魔物をちまちまと倒しつつ、連中の言葉に応える。少年の命を守りてぇのは、俺も同じだ。

 だが、やるのなら最大戦果だ!まだ、まだ俺達はやれるんだ!


 

 良し!デュアン達マギ・アーマー隊も一応はなんとか欠員無しで離脱が出来てるみてぇだな。

 とは言え、手放しじゃ喜べねぇ、やっぱネックは真打と取り巻き共だ。

 デュアン達が頑張ったおかげで2体は仕留められたようだが、まだ後5体残ってやがる。ヤツ等だけは何としてでも倒しておきてぇ。


 俺達もそろそろ限界だ。本格的に退却しなけりゃ合流できなくなる!


 『少年!こっからは全部"弾丸"を使用するぞ!ジークレストを使い潰すつもりで行け!!』

 「は、はい!」


 幸いな事に取り巻き共は無傷な奴は一体もいねぇ。それなり以上の傷を負ってる。そこに目がけて"弾丸"を撃ち込んでやりゃあ、倒せるはずだ!

 俺も勿論可能な限り"ジーク"を動かすが、何よりも少年が正確に操縦する必要がある。じゃねぇと俺の消耗が激しくなって退却に支障が出かねねぇからな。


 そんな懸念を持ってたんだが、杞憂だった。

 少年はマジでスゲェ。目を瞑ってたからなのか、緊張もしてたし確かに恐怖も感じて立ってのに、正確に"ジーク"を操縦してくれた。


 おかげで取り巻きは全滅だ。

 これで残る脅威はあのデカブツだけになるわけだが…。ヤツにはたとえ至近距離から"弾丸"を撃ち込んでもダメージを与えられる気がしねぇ。


 しかもヤツの勢いは失ってねぇ。このままだと先に下がってった連中と合流できたとしても、態勢を立て直す時間が無くなるかもしれねぇ。


 考えろ考えろ考えろ…。シミュレートだ…。

 今の状況で俺がヤツにダメージを、とまではいかねぇにしろ、勢いを失わせる手段を探すんだ…!


 ………。

 ……。

 …。


 ………!見つけた!!ちっともったいねぇが、コレしか方法はねぇ!


 "弾丸"もちょうど残り1発!やるしかねぇ!やってやるぜ!!

特殊弾倉、残弾、1。この状況から出したサブロウの答えは…!

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