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投げ打ってでも勝ち取らねばならないもの

 桜庭が出した指示により、アンジェラは防戦一方となっていた。


 白いエネミーである模倣犯がアンジェラを責め立てる。隙をみて反撃に転じようとしても、周囲のプレイヤーがアンジェラに攻撃し、それを許さない。さらに不利な条件としてアンジェラは対等な立場での戦闘を望んだ。ゆえにプレイヤーの攻撃によるダメージが通る。だが相対する模倣犯はプレイヤーからの流れ弾に当たってもダメージが通っていないようだった。


 白と黒のエネミー同士の争いとそれを支援するプレイヤーは、まるで悪魔を討伐するために遣わされた天使と勇士のようであった。


 この光景が全国放送されている。


 黒のエネミーは、アンジェラは、大衆の目には悪者のように映っているだろう。


 今からアンジェラを助けに入る。


 ここから先は引き返せない。


 ポイントオブノーリターンだ。


 俺は今から民意の敵になる。


 障害物に隠れながら、素早く進む。


 アンジェラを攻撃するプレイヤーの背後へ向かって。


 だだっ広い広場と言えど、アンジェラと模倣犯が戦っているのは上空であり、下方向への注意は散漫になっていた。


 ゆえに気付かれずその視界に映ることなく移動が完了する。。


 プレイヤーまでは約十歩ほどの距離。


 俺は叫ぶ。


「アンジェラ! 作戦開始だ!」


 そして、プレイヤーに向かって駆ける。


 片手に高周波ブレードを携えて。


 プレイヤーが俺の存在に気付き、振り返る。銃を構える。互いにダメージを与えられないものだと理解していても、それは長年の経験に基づいた反射的行動であった。


 発砲。


 乾いた音が俺に触れる。


 ダメージはない。


 そのまま突き進み、高周波ブレードを振りかぶる。


 無駄だと言わんばかりの笑みをしたソイツに向かって振り下ろす。


 高周波ブレードが切り裂く音、ダメージエフェクトとしての血、そしてダメージ表記が現れる。即死のそれであった。


 ソイツは信じられない顔を残し、死亡後に現れるアイテムボックスに姿を変えた。


「悪いな。もうなりふり構わってられなくなったんだ」


 聞こえていないだろうソイツに言った。


 アンジェラと予め決めておいた作戦。それは俺の攻撃だけ味方へのフレンドリーファイアを許可するように設定変更すること。プレイヤーとあの白のエネミー問わず、正々堂々と戦いたいアンジェラにとって、俺が攻撃を加えられるようにすることが最大限の譲歩であった。


 俺がプレイヤーを狩り、アンジェラが作戦に集中できるようにすること。これが作戦であり、俺が裏切り者に映る最終手段であった。


 次の標的に向かって走り出す。


 事前に各自の攻撃位置は頭に入れておいた。あとはそこへ向かい、殺るだけ。それを繰り返し、アンジェラに有利な状況を作っていく。一人、また一人狩る。キルログが流れ、俺がプレイヤーを狩っていることに気付く奴が増えていく。反撃を試みてみる者、持ち場を離れて逃げ出した者、命乞いをする者、理由を問う者、様々な態度で出迎えられた。


 逃げ出した者以外は残さず殺し、ゲーム外へと退去させた。


 戦場から銃声は止み、エネミー同士が殺し合うだけの場となった。


 あとは模倣犯を打倒する。それだけだった。


 白と黒のエネミー同士がやり合う戦場。


 そこへ続く一本道にそいつはいた。


「よう、親友。チートに手を染めるのはどうなんだ」


「お前こそ無暗に力を求める姿勢はどうかと思うぞ」


 桜庭|《親友》が立ちはだかった。

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