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妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜  作者: 宮比岩斗
5章 平等な戦い

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決戦当日

 決戦当日となった。


 作戦は十八時開始。作戦は既に共有されており、時間になったら各自ログインし、エネミーを待ち構える手はずになっている。


 バトルロワイアルでの決戦が予定されている。国がメーカーに掛け合い、公には公開されない特殊設定のステージを作成してもらった。戦闘マップはデバッグマップ。テクスチャなどはなく、地面の形をしたモノクロステージに、立方体の白いオブジェクトが並んでいる。エネミーが近距離戦闘しかできないことを想定し、だだっ広く、高低差のあるマップ構成となっている。高速移動するエネミーに対抗するために、マップギミックによる高速移動が可能らしい。本来このようなマップは長射程が有利になり過ぎるため、敬遠されがちだが今回は本気で嫌がらせをやってみた形となっている。参加者はマップ散策を数日前からしており、頭に形状を叩き込んだ。俺も叩き込まれた。


 テストマップのようなものだろうが、それなりに工数がかかっていそうだ。イコール金がかかっていそうということだ。つまりは俺たちの血税から作られている。国民に被害が出ており、その元凶を討伐するためという名目で見逃されているが、そもそもエネミーが現れなかった時を考えると末恐ろしいことになりそうだ。野党が税金の無駄遣いだと与党を攻撃する口実にはなるだろう。


 もっとも現れたとしても討伐は敵わないのだが。


 内閣総理大臣も電脳科学庁の大臣もそれを理解したうえで本作戦を決行している。電脳科学庁の大臣が発表してしまったので決行するしかなくなったともいえる。


 そんな茶番劇と呼ぶに相応しい討伐作戦の指揮権のトップに俺はいる。指揮権のトップにいれども、現場判断はプロゲーマーチームの方が優れているため、緊急事態が発生しない限り俺からの指示は出ない。


 神輿は軽い方がいいという理論に基づき、討伐作戦の顔として利用されている感は否めない。妹お手製アバターの顔がいいからそう感じるのかもしれない。けれどこの顔になってからニュースなどで紹介されるとき、当たりは柔らかくなった気がする。


 桜庭からはエネミーに関しての情報をくれと詰められるものの「必死に逃げ回ってたら見逃された」と言って誤魔化している。ただ一点「エネミーが数体現れることがあるから。その時だけ俺に指示を出させてくれ」と言った。


「お前やっぱ色々知ってんだろ」


「色々あんだよ」


 そう答えたら怪訝な顔をされるも「んじゃ俺も好きにやるわ」と諦めの顔をされた。


 今は自宅で早めの夕食を取っている。


 食費節約のため、素パスタだ。


「にーちゃん、もう少しいいもの食べなよ。身体壊すよ?」


 もはや身体がない妹に心配される。


「まだ若いからいける」


 そう言ってテレビを点ける。


 そこでは特番が流れていた。今回の作戦は生中継で放送される。そんな予定はなかったのだが、お偉いさんの間でそういう話が挙がったらしく急遽放送が決まった。メーカーにとってはゲームの宣伝、プロゲーマーチームは知名度向上など、討伐作戦が成功すれば美味しいものだったため、この賭けに乗った。損しかない俺の意向は無視された。


 特番では定点カメラ、各自のプレイヤー視点から戦場が見れるようにしていると伝えられた。大会などで見られる手法をそのままテレビ中継に応用しているらしい。


 特番の司会が有識者であるという人物に話を伺う。


「本当にエネミーは現れるのでしょうか?」


「現れるでしょう。配信者を中心に狙う、ネットアイドルである汐見柚子さんの生配信で目の前に現れる、これらのプロファイリングの結果からエネミーを操っている人物は、目立ちたいという意識が強くあるものだと思われます。日本のみならず世界中が見守ることになる戦いとなれば、きっと現れるに違いありません」


 警察関係者らしいが、裏事情を知っている身からするとズレたように感じるが、世間からはそのように見えるのだろう。


「にーちゃん、そろそろ入っておいた方がよくない?」


 作戦開始十五分前。


 出撃準備室に入るにはちょうどいい頃合いであった。

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