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妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜  作者: 宮比岩斗
5章 平等な戦い

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土下座した上に怒られる人

 大臣を土下座したことで、俺の信者とアンチがそれぞれ全力疾走で評価を正反対に伸ばしているのをただ黙って見ているしかなかった頃、一本の電話を受ける。ディスプレイには北御門と表示されていた。あの天樹会のモデル君がなんのようだと思いつつ、このタイミングでは嫌な連絡だろうと思うと正直出たくなかった。


「何の用だ?」


「あ、三刀さん? 北御門だけど今やってる記者会見って見た?」


「大臣が土下座してるやつだな」


「そうそう。それについてなんだけど会長が三刀さんと話したいって言ってるけど代わっていい?」


「……まあ構わないが」


「よかった。じゃあ代わるね」


 そう言って電話口から「どうぞ」という会話が聞こえて話者が変わったことが分かった。


「元気にしとった?」


 聞く側の方が元気にしてたのがわかる挨拶であった。


「大臣を土下座させてしまうぐらいには元気ですよ」


「いやーあれ見物だったなぁ。うちも長年生きてるけどテレビであんなん見るの号泣議員以来やわぁ」


 号泣議員。号泣会見や初公判のドタキャンなど話題を呼んだ大昔の議員だ。バカヤロー解散とか国会内でバリケードを築いたとかと並んで珍事件として扱われている。


「それでなんの用ですか?」


「エネミー討伐の要請、もういっとるやろ?」


「知り合いから私的にですが、ありましたね」


「それについて謝罪しようと思ってん。あれなー本当は作戦自体なかったんやけど、神の存在知らない省庁がエネミーに関する突き上げが凄くて独断で動いたらしいわ」


 呆れ口調で樹神さんは続ける。


「デジタル庁……今はまた名前違うかもやけど、そこが一番縁遠いとこやったから起きた事故やから無視してくれてかまへんよ。なんならうちが間に入って話つけたるわ」


 やはり本物の神ともなると偉い人とのコネがあるらしい。


「要請は無視ということですが、そもそもエネミーの討伐作戦自体はなくならないのですか?」「あーそれは難しいかもなぁ。実際に討伐するかどうかは別にしても、あれだけ大々的に発表した以上、なにかしらポーズはとらないかんやろしな」


 ならば俺は参加せず、アンジェラも現れないのが一番穏当なシナリオになるだろう。


「そこで頼みがあんねんけどな、あの子と相談する場を設けてくれへんか?」


「あの子とは?」


「君にぞっこんラブな精霊の女の子おるやろ」


「アンジェラのことですか?」


「お、名付けしたんやな」


「まずいかったですか?」


「君なら信用できるからかまへんよ」


 結婚相手方の親に褒められるようなシチュエーションだなと思ってしまう。


「しかし、どうしてまた?」


「あの子真面目やから罠だと知ってても呼ばれたら行くタイプやろ。説得して止めたいからや」


「それは真面目ではなく勝気なのでは」


「そうともいうな」


 そう言って笑う樹神さん。笑い終えたところで「それに気になることもあるしな」と何か含みを持たせた。神と精霊のやり取りで俺が関われることはないだろうと思い追求せずにいると、樹神さんの方から「うちからは以上や。ほかに何か聞きたいことある?」と訊かれた。


 俺は少し考えて、一つ尋ねた。


「ちなみにこれは興味程度ですが、一番縁が深い省庁ってどこですか?」


「宮内庁やな」


 たしかに、と納得できる答えであった。

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