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妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜  作者: 宮比岩斗
5章 平等な戦い

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当てずっぽうの方が実は正解なことがある

 アンジェラがアイドル参戦断固拒否の構えを解かないので議題は次へ移る。仕方なく。


「そもそも精霊たちを倒した力とはなんなんだ。何故俺は気絶したんだ?」


 アンジェラは答えた。


 心の力、ひいては魂の力なのだと。魂、心、記憶、信仰、などは神をはじめとする霊的存在を倒しうる唯一の力だという。いずれも己の在り方が力になる。ただし、力の拠り所によっては代償を支払う。魂や心などは使う度に摩耗する力もあれば、記憶が薄まったり信仰が揺らげば途端に力が落ちるものもある。俺は摩耗する方だという。


 ゆえに極限まで心を込めた二射で俺は気絶した。


 出力自体は及第点どころか満点以上の評価を与えてもいいらしいが、力のコントロールをできるようにならなければ、馬鹿みたいな出力を活かす小技が使えなければ、宝の持ち腐れだという。


 なので妹と一緒にコントロールする特訓を受けることが決まった。


 とは言っても妹は先にアイドルとして信仰を集めるためユニットを組む相方探し、俺は摩耗した心を回復させるのが先決で特訓は翌週以降となった。それまではアンジェラが妹について護衛するという。


 そこで今日は解散となった。アンジェラが居座りそうだったが、妹の厳重な抗議の結果、部屋から追い出すことに決まる。アンジェラは不服を申し立てたが、少し考える素振りをして「またデートに誘いたくなったら呼んでね。すぐに来るわ」と投げキッスして出て行った。また妹をなだめる羽目になる。


 ゴールデンウィークも後半戦に入り、残り数日やることをベッドに寝転び考えた。


 ブルースフィアに入ろうともしたが、俺が地形を壊したせいか緊急メンテに入っていた。悪いことをしてしまったと青くなったが妹が「ビルド仕直せばすぐに直るっしょ」と俺にはよくわからないことを言って安心させようとしてくれたのでひとまずをそれを信じることにする。「ただなぁ、ニュースにもなって大変だし、サービス再開できるかなぁ」とそもそも論も飛び出た。


 ひとまずテレビをつけて、ニュースに目を通すことになる。


 やはり昨日の事件、とりわけ記憶が全損、寝たきりになった者が大量に現れたことが取り沙汰されていた。


 コメンテーターが神妙な顔をして言う。


「敵性存在、いえサクラバ氏が呼ぶようにエネミーと呼びましょう。エネミーは大量の記憶を奪いました。それどころかその一線だけは超えない、超えられないと考えられていた意識不明者も大量に出してしまいました。これは何が原因なのでしょう。ネット上の言説によると、エネミーはとあるプレイヤーを敵視しているのではないかというものがありました。これを深掘っていこうと思います」


 そのフリから出たのは、とあるアバターであった。


 銀髪、赤眼を携えた悪人面のイケメン。フォーマルなジャケットにパンツ、ノーネクタイのシャツで纏めており、ホストかチンピラみたいでお近づきになりたいと思わないタイプであった。反社会的な見た目で思わず道を譲り、視線も下げてしまうような危険な雰囲気しかない野郎であった。


 俺である。


 正確には妹が作成したアバターであった。


 お披露目会の映像が流されていた。悪そうな顔ばかり選んで切り抜かれ、挙句その場から連れ出すためにアンジェラがエネミー状態で俺を追いかけるという茶番もしっかり流された。それは俺が悪人で、悪人の俺を敵視しているかのような編集の仕方であった。


 映像が切り替わり再びコメンテーターを映す。


「この人物はエネミーを唯一撃退したという人物と同一人物です。以前、量産品のアバターが狩られているという事件をお伝えしたことがありましたが、それはこの方がそれを使用していたからだと考えられています。エネミーとこの人物はもはや切っても切れない関係と言っても過言ではありません」


 番組を盛り上げるための当てずっぽうなのだろうが、あながち間違いでもない。事実エネミーだったアンジェラが俺に接触して、家に忍び込んだ末に馬乗りまでかまされた。


「この人物と友人で、エネミーと戦闘経験もあるサクラバ氏と通話を繋ぎました。この方はどういった方なのでしょうか?」


 画面が三度切り替わり、プロゲーマーサクラバのアバターが映し出される。細身で目が切れ長のイケメン社長然としたアバターは、プロゲーマーというよりもベンチャー企業の社長が番組に呼ばれたかのように映った。


「どうもこんにちは。サクラバです。今映った人物は仰る通り友人で、リアルでも交友があります。普通と呼ぶと語弊はありますが、悪いやつではありませんよ。あとこれは有名ですがアイドルオタクです」


「なるほど。悪いやつではないということですが、なぜエネミーに狙われるとお思いで?」


「単純に自分を倒した強い奴に勝ちたいから……じゃないですか?」


「ふむ、エネミーはアスリート気質の可能性があると」


「そこまでは言いませんが、単純に悔しかったからとかそういう理由はあるかもしれません」


「まー私どもも推測の域がでないのでそこは仕方ありませんね。ちなみにこの映像のあと、この方がどうなったのか情報がないのですが何かご存知でしょうか?」


「いいえ、俺も何度か連絡を入れているのですが反応がないですね」


「それは心配ですね」


「実はそこまで心配はしていません。殺しても死なないような奴なんで」


 スタジオが笑いに包まれる。


 プライベートスペースから配信しているようだから、以前貰ったパスワードで今すぐそこに乗り込んでやろうかという悪意に駆られる。


「えーサクラバさんから大事なお知らせがあるそうです」


 コメンテーターが言った。


 何か大会かスポンサーからの要望で商品紹介だろうかと大して気に留めないで眺めていると、耳を疑うことを桜庭は言いやがった。


「今回の件を重く見て、政府がエネミー討伐作戦を予定しております。プロゲーマーチーム、市井の一プレイヤーも参加を募っております。参加してくだった方には報酬を、無事討伐ができたら追加報酬を用意します。危険なことは重々承知しております。ですが将来を見据えた場合、これ以上の被害は看過できないというのが政府、そして俺らの見解です。皆さまの力を、俺らに貸してください」

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