地元じゃできないこと
桜庭と偽物を調子づかせた翌日。
週末で用事もないから惰眠を貪っていた。
手掛かりを得た桜庭は偽物と一緒にエネミーの手掛かりを探そうとか誘ってきた。もちろん俺は巻き込まれる形となる。無論、拒否の言葉を突き付けたが。
手伝うとは言った。
だが、いつ手伝うとは言っていない。俺の気が向いた時だけ手伝うことだってできる。そんな詐欺まがいなことはするつもりはないが、昨日の今日で探し出そうという気は起きない。昨日は夜遅くまで話し合いに付き合ったのだから、今日ぐらいは好きにさせて欲しいというのが本音だ。そもそも虚弱体質な俺は一日一ターンしか動く気にならない。
そんな言い訳に丁度良く春先の寒い日ということもあり、頭から布団と毛布を被り、ぬくぬくと暖を取っていた。ほんわかとした温もりが体を包み込み、心の影を溶かしていく。新生活と中指を立てたい偽物と何故か頭に浮かんだ妹のドヤ顔で蓄積したストレスが溶けていく。
一生お布団の中にいたい。
そう思った矢先、身体にぶるりとした感覚が芽生える。
尿意だ。
中途覚醒の目で携帯を見る。点けた画面が眩しすぎて目をやられる。数十秒布団の中でのたうち回ったあと、ようやく時間を確認できた。
昼過ぎを回っていた。
そりゃ尿意も出るし、なんだったら喉も乾き、小腹も空いた。
寝間着姿のままコンビニで朝食兼昼食を買いに行こう。
見苦しくない格好をしろとうるさい義母がいない場所だからできる所業である。
用を足し、帰ったら推しの配信をすぐに見れるようにパソコンを点けておいて、携帯と財布を持ってコンビニへ向かおうとする。
「あーっ! そんなだらしない格好で外出るとか駄目なことしてる!」
妹によく似た聞き覚えのある声に振り返る。
パソコンのディスプレイに映りこんだ偽物の姿があった。